ヒデロー

パラレルワールド・ラブストーリーのヒデローのレビュー・感想・評価

2.5
【染谷くんの演技が光る一本】

足りない。足りなすぎる。
原作の見所が悉く欠けていました。

原作がある映画は、できる限り鑑賞前に読むことを心掛けています。本作もまた東野圭吾の世界を堪能してから鑑賞しました。
またしても、映画には越えられない小説の高い壁を痛感してしまいました。
原作は450ページ程ある大作なので2時間の尺で映像化すること自体、無理難題ではあるのですが、それにしても本作を映像化する上で必要な箇所が省かれ過ぎだったと思います。

本作はタイトルからも分かるようにSFミステリー+ラブストーリーです。
映画はどちらも中途半端。
山場もなく淡々と話が進んでいき気がつけばネタばらし。あっという間に結末を迎えてしまった。
原作を知っているからこそ理解はできるが、初見の人は消化不良だったのではないでしょうか。
主人公が真相にたどり着くまでの道のりがあっけなく、またハラハラ感もありませんでした。
なぜ、夏江や景子、雅美といった重要パーソンを生かさないのか。そして夜間のハラハラする侵入劇をカットしたのか。
不満が募るばかりですね。

そしてラブストーリー。
これもまた崇史、智彦、麻由子といった三角関係が織り成す心の機微をどうして描けないのか。
夏目漱石の「こころ」を彷彿とさせるまでの親友同士による女性の取り合い。今まで積み上げてきた業績や地位を捨ててまでも愛する女性に我が身を捧げる決死の覚悟。ここに心打たれたのに、映画ではさっぱり。何をやっているんだか。

と、ネガティブなレビューばかり吐き出してしまいましたが。
染谷くんの演技はピカイチでしたね。
あと音響が良かったです。

私と同じ思いをしている原作ファンの方は大勢いるのではないでしょうか。