うめまつ

ねことじいちゃんのうめまつのレビュー・感想・評価

ねことじいちゃん(2019年製作の映画)
4.4
スクリーンからお日様の匂いがした。日向ぼっこして太陽をいっぱい吸った猫の匂い。当たり前だけど画角の何処かにほぼ猫が居る。1人ででーんと構えたり、モフモフとひしめき合ったり、気づかないくらいそっと人に寄り添ってる。そののびのびした姿を見てるだけで目が潤んでくる。老化か。画面から降り注ぐマイニャスイオンに毎秒癒されて、脳内メーターがみっちり「ねこ」で埋め尽くされて、映画鑑賞能力が限りなくゼロになった。もう今すぐ荷物をまとめてこの島に越さなくてはならないとさえ思った。

土鍋の豆ごはん、ミラーボールの煌めき、フェリーを見送るタオル、みんなのミーちゃん。田舎の島で助け合いながら暮らしている、おじいちゃんとおばあちゃんと若者の日常を猫特盛でほのぼの描いてるだけなのに、どうしてこんなに離れがたいんだろう。何にも特別なことは起こらないし、嫌な人さえ出てこない。その暮らしぶりやエピソードはリアルともお伽話ともちょっと違う。でも心を両手で包み込んで直接あたためてくれるような、親しい優しさがあった。

岩合さんが人と猫を同じ目線で撮ってるから、出演者がみんな猫に見えてくる。志の輔さんはちょっと太めの茶トラかな?小林薫はワイルドなサビ柄で、田中裕子さんは和風のミケ、銀粉蝶さんはロシアンブルー、柴咲コウはターキッシュアンゴラに違いない。。と勝手に猫を当てはめながら見て脳内が倍モフモフした。あぁみんななんて可愛いくて仲良しなんだろう。羨ましいなぁ。混ざりたいなぁ。ゴロゴロゴロゴロ。

もうそろそろ猫に興味のない人は読んでないと思うから余計な事を書くけど、私は一緒に暮らしてる2匹の猫が居なかったら、今頃実家に帰って荒んだニート生活を送っていたと思う。本当に本当に猫が居てくれて良かった。私なんかのところに来てくれてありがとう。泣き腫らしてる時もご飯をせがんでくれてありがとう。毎朝容赦無く起こしてくれてありがとう。寒い冬にぬくもりを分けてくれてありがとう。慈しむという感情を教えてくれてありがとう。世界中の猫が今夜、安全で少しでも快適な寝床を確保できますように。
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