ベルサイユ製麺

82ミニッツのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

82ミニッツ(2016年製作の映画)
3.1
…タイトルに“ミニッツ”が含まれている作品にはハズレが無いように思えます!『イレブン・ミニッツ』、『ミッション・8ミニッツ』『15ミニッツ』…。確かに“イヤー”や“セカンズ”も悪くないですが、やはりミニッツを推していきたい!

新たな名作“ミニッツ”なるか⁈
『82ミニッツ』!

冒頭、吐瀉物?に塗れバスタブの中で目覚める主人公ショーン。よろよろとリビングに向かい愕然。知人女性サラがオーバードーズで亡くなっている…。気が動転し、そのまま部屋を後にするショーン。マンションを出るとサラの恋人ケニーに出くわすが、彼を振り切って車でその場を後にする。
ショーンは疎遠になっていた恋人のエイミーの元に逃げ込むが、ケニーがここに向かっていることを知り部屋を飛び出す。
エイミーの部屋にケニーが現れ、ショーンの行く先を尋ねるがラチがあかず、ひとり当て所なくショーンを探しに行く…。

ストーリーは単純、且つどうでもいい。
ケニーの彼女サラと関係を持ってしまったショーンがエイミーの助けを借りてケニーから逃げ回ります。意外な展開や深い人間ドラマがある訳でも無いこの物語を、如何に映画として成立させているかというと、“全編ワンカット”なのですよ!
…まあ、それだけです。でも、なんか見れちゃうのですよね。例えば“主に男性向けの特殊用途映像作品”はワンカットの物が多いのではないかしら?ワンカットには野次馬根性を呼び起こす煽情的な力が有りますよ。
個人的にグッときたのは、例えば、ショーンが去った後にエイミーに、エイミーから締め出された後ケニーに、と視点がバトンタッチしていく演出です。別人の視点の間に他のキャスト達が次の現場に先回りして…とか、撮影の舞台裏想像するとワクワクします。まあ、普通に編集で繋いでるだけの様な気もしますがね。劇伴は基本ミニマルで心拍っぽいジワジワ系なのですが、マンションから表に出る瞬間などにスルッと違う曲になるのがゲームっぽくて楽しかったですね。
舞台はカナダ。寂れたカナダの夜の街を、当て所なくウロウロ。雨でビショビショ。路地裏でキョロキョロ。ムードは凄い好み!ちょっとだけ『グッド・タイムズ』みたいでも有る。
…ただ、残念ながらお話に何のツイストも無く、単なる浅はかな人達の追いかけっこに始終してしまうので、感想も特に思い浮かばず、スルーっと流れて消えてしまいました。コレなら別に“コンビニに行ってる間に佐川急便が配達に来た”でも何でもそれらしく撮れてしまうね。或いは猫が散歩するだけとか。きっとワンカットで撮るに相応しい題材が有るのだと思いますので、今後もチャレンジしてみて欲しいです。

正直名作とは言い難いのですが、なんとなく嫌いになれない“ミニッツ”作品と言ったところでは有ります。
…原題『broken mile』。ノー・ミニッツですね。やっぱ無し!