sachi

家へ帰ろうのsachiのレビュー・感想・評価

家へ帰ろう(2017年製作の映画)
3.8
5

ちょっと頑固で偏屈者おじいちゃんのロードムービー。
ナチスに迫害され、愛する家族を奪われた過去。行く先々で出会う人たちと関わりながら、見守られながら、かつての友に会うため、トラウマの地に向かう。

その国に生まれただけで、後世の人々に何の罪があろうかと思う。
一方で、過酷な時代にトラウマなどという言葉だけで片づけられない、重く苦しく深い傷を受けた人に対してどう接するのか。ドイツの女性が誠心誠意の対応をしたその姿勢に深く感銘を受けた。
文化人類学者の彼女が自国の歴史から何を学び取ろうとし、何を考えてきたのかを思うとき、主人公に降りかかったホロコーストを思うのと同じほどに涙がこぼれる。そこに大切な一つの答えを見た気がした。
人間は時に政治的主張のために過去の歴史を利用するが(それゆえに、時にうんざりさせられるが)それらを取り除いていくと、ただ深く傷ついた人がいて、ただ真摯に向かい合う人がいる。大切なことは何か。雑音に気を取られ、見失わないようにしたいとあらためて。

良いラストだったなあ。家族とのことも気になりますが、希望もいろいろ。
現実的には気力&体力が衰える前に心の引っ掛かりは片した方が良いと思うが、そのくらい時が必要だったのもまたあるでしょうね。

5
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