回想シーンでご飯3杯いける

家へ帰ろうの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

家へ帰ろう(2017年製作の映画)
3.6
最近は、原題に無いナチスやヒトラーの名前を邦題に盛り込んだ映画が結構多くて、それらのフレーズがある種の売り文句みたいになっている風潮に疑問を感じていた。誰もが認める絶対悪、だから被害者は絶対に可哀想で、、、、それは間違いではないのかもしれないけど、映画を観て何かを感じ考えるという、とても大事な部分を単純化されたような気がして、僕はあまり歓迎できないのだ。

本作はホロコーストから脱出した仕立て屋の男性が、当時の恩人である同郷の老人にスーツを届けに行く様子を描いたロードムービーである。70年ぶりの再会となるが、老人は何のあてもなく旅に出る。題材的には先に書いたようにナチスやヒトラーを含む邦題を付けられそうな内容であるが、敢えてそれをしなかったのは好感が持てる。

老人はとても頑固で「ドイツ」はもちろん「ポーランド」の名前も口にしない。そんな彼を手助けするのは、旅先で出会う女性達。彼女達と触れ合う事で、老人の心が少しずつ解放されていく。

ユダヤ人の老人を主人公に置きつつ、彼に対して周囲の人間がどう接していくのかを優しいタッチで描き出しているのが素晴らしい。最近の日本でも、主に高齢層の嫌韓ムードが取り沙汰されている一方で、若い世代の間ではK-POPや韓流メイクが大流行。育ってきた環境や教育によって思想には隔たりが生まれてしまうのだが、じゃあ僕達はどうやって違う世代と交流していけば良いのだろう? 本作はナチスやヒトラーの問題だけではない、人と人との交流を描いた作品なのだと思う。