ベルギーのある都市に暮らす夫婦。静かな慎ましい生活を送っていた主婦のアンナは、ある罪によって夫が収監されてしまったことから、少しずつその生活の歯車が狂い始めるが…。
『まぼろし』、『さざなみ』、そしてこの『ともしび』。
まるでシリーズ化されているようなタイトルの、シャーロット・ランプリング様の主演作たち。
どれも、その圧倒的な存在感と演技力に見応えを感じていてとても好きなのですが、今作品はもう、シャーロット・ランプリング様の凄みをまざまざと見せつけるような演技が、さすがとしか言いようのない説得力で迫ってきた。
これはフランス・イタリア・ベルギー合作ですが、いかにもフランス映画的な素っ気なさ(?)と難しさで、苦手な人は多いと思うので、人にはおすすめしないけれど、究極だと思う。
そして、先にあげた3作品の中でも、これが一番しんどくて、ズシリときてしまった。
つ、つらい…。
観てからもう数日経つけれど、日を追うごとにじわじわくる感じ。
観た直後は、正直、唐突に終わるラストがあっけなくて、取り残されたような感覚だったけれど。
それでも、この作品の主人公のアンナのことを考えずにはいられなくなっていた。
説明が一切なく台詞も極限に抑えられている中で淡々と描かれていくアンナの日常生活。
そこから、この夫婦の過去を読み取り、アンナの置かれている状況を少しずつ理解し、彼女の心情を想像していく。
なぜ、アンナは息子にあんなにも拒絶されなければならなかったのか。
なぜ、トイレの個室で、アンナは独り嗚咽しなければならなかったのか。
なぜ、アンナは打ち上げられたクジラを見に行ったのか。
家族もいるのに、老齢にさしかかったアンナが、なぜこんなにも孤独な状況に置かれなければならなかったのか。。
これを観て、さっぱりわからない、つまらないとしか感じない、という人の方が幸せなんじゃないかと私は思う。
アンナの寂しさや哀しみに共鳴してしまった私は、この先の自分の将来に不安すら覚えてしまう。。
あの孤独な姿に未来の自分を重ねてしまいそうになったから。
このままいったら寂しい老後かも…と今から恐れている私には、あの孤独なアンナの姿は、とてもきつかった。。
あのラスト、アンナのその後の日々に、希望があるといいなと心から思う。