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ライトハウスのtanayukiのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.2
船乗りの守護聖人聖エルモの火(セント・エルモス・ファイアー)は雷雨のときに船のマストの先端が発光するコロナ放電で、落雷が近いサインなんだけど、分厚い積乱雲の下で青白く光る炎は嵐に怯える船乗りにとってはエラスムス(エルモ)のご加護に見えたのだろう。それは真っ暗闇の大海原の中にあって、小さく、だがはっきりと目に映る灯台の灯りがもたらす圧倒的な安堵感とたしかに重なる。

だが、灯台が灯台の役目を果たすには、なるべく陸地から離れたところにポツンとあるのが望ましく、そうなると絶海の孤島に灯台守が事実上監禁される「なにが起きても不思議はない絶好の密室ミステリ、あるいは逃げ場のないホラーの舞台」ができあがる。その孤立感は南極基地か潜水艦か宇宙船内か、はたまたシャッターアイランドかというくらいなもので、無線がない時代の嵐で近寄れない孤島の灯台というのは、なかなかハイレベルな孤立感を醸し出す。そこに閉じ込められるのが粗野な男2人だけなら、その孤立感はさらに増す。

カリブの海賊じゃないけど、船乗りたちにはデイヴィ・ジョーンズの墓場や人を食らう人魚セイレーンなど、数多くの昔語りが伝わっていて、孤独な時間が長いほど、そうした物語が心の隙間にそっと忍び寄ってくる。最初は言った本人も冗談だったかもしれないが、冗談だよと言ってくれる人がいないと、だんだんその気になってしまって、正気を保つのが難しくなる。狂った先に何が待っているかは、映画を見て確かめてほしい。

個人的には、ロバート・パティンソンとウィレム・デフォーのシェイクスピア劇のような超濃厚で濃密な演技合戦をこれでもかと見せつけられて、もうお腹いっぱいです。食べすぎてゲップ、じゃなくて屁(ガス)が出るよね。

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△2021/07/11 TOHOシネマズシャンテで鑑賞。スコア4.2
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