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ライトハウスのbackpackerのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.0
「ふたりの男が巨大な建物の中に閉じ込められると、ろくなことが起きない。」byロバート・エガース(監督)

今やこの会社を知らぬシネフィルはいないと言って過言では無い、映画制作・配給会社A24。
A24といえば、2020年に日本でも爆発的ヒットを飛ばした『ミッドサマー』や、2016年アカデミー作品賞受賞の『ムーンライト』等、他に無い尖りまくりな映画を提供してくれる、大変貴重かつありがたい存在。
最近は、A24と聞くだけで安心感すらあります。

そんなA24が今回送り出したのは、岩の孤島の灯台という完全な閉鎖空間を舞台に、灯台守の2人の男(ウィレム・ディフォー&ロバート・パティンソン!)の狂気と恐怖を描くファンタジー・ホラー・ドラマ。


率直な感想を一言で書きますと、
「わけわかんねぇ」
です。

若い新人灯台守のイーフレイム・ウィンズロー(演:ロバート・パティンソン)が見る、人形や海洋生物の姿をした異形の化け物(の幻覚)は何なのか?
老いた熟練灯台守のトーマス・ウェイクが灯室で行う奇妙な儀式が描くものは?
そりの合わない2人の関係性と、彼らの謎めいた過去はどこまでが真実なのか。
クライマックスでウィンズローが目にした"灯り"の中身は何なのか?
意識を取り戻したウィンズローを啄むカモメ達という状況は何なのか?

……等々、疑問が尽きることなく山積し、その回答は見てるだけでは解消されない、まったくもって「わけわかんねぇ」映画でした。



幸いなことに、私が鑑賞したのは『映画評論家町山智浩さん解説付き』版でしたので、監督のインタビューに基づく説明等を聞くことができ、だいぶ疑問点を解消する事ができました。
また、本作公式サイトでも、徹底解説として多くの情報が記されていますので、是非検索してみていただきたいですね。

以下は個人的備忘メモとして、上記解説の内容をいくつか箇条書きで記しています。
若干ネタバレ気味ですので、未見の方は読み飛ばしてください。

ーーー【備忘】ーーー
〈ファンタジー要素について〉
・ギリシア神話の海神プローテウス(ウィレム・デフォー)が守る灯台の灯りは"コズミックエッグ"の火である。その火を盗まんとしたプロメテウス(ロバート・パティンソン)は神から罰をうけ、カモメに腑を啄まれることになる
・H.P.ラヴクラフト(ニューイングランド出身)のクトゥルー神話的な神秘(アメリカの海辺の田舎街に、宇宙規模の秘密、脅威の宇宙生物の潜伏等。コズミックホラー。)を描いている
・ロバート・エガース監督の"エガース"という性の語源は、「卵を盗む者」

〈「カモメを殺してはならない」〉
・イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コールリッジの詩『老水夫行』の要素を拝借
・カモメはパペットを代用し、後ほどデジタル合成。ただし、「訓練された救出用の本物のカモメも三羽(名前はレディ、トランプ、ジョニー)出演している」とのこと

〈灯台の物語について〉
・1801年に実際に起きたとされる『二人のトーマス』の物語
・当初エドガー・アラン・ポーの未完作品『灯台』の実写化を計画
・ジャン・グレミヨン監督の『灯台守』(1929年:フランス)を参考に、映画のアスペクト比を1.19:1とし、「この映画の空間は、意図的に窮屈に感じるよう」にした。即ち、閉鎖空間の恐怖をアスペクト比からも表現しているのである。
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霧笛の音が忌々しく響き渡り不安と苛立ちの満ち溢れた、超神秘・超自然的ホラー映画。
A24作品が好きな方は勿論の事、そうでない方も、本作の幻想的恐怖世界を、是非お楽しみください。
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