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ライトハウスのhynonのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.6
ある意味、「灯台下暗し」。

光を届け、夜の海を照らす灯台の内部では、人間の闇が織りなす戦慄のドラマが繰り広げられていた…。
A24製作のスリラー。

悪臭が漂ってくるようだった…笑
不穏で不快。
楽しいシーンが全然なかったな。

モノクロ映像のせいか、鳥のせいか、グロ描写とエロ描写のせいか、「異端の鳥」を思い出した。

内容について詳しいことは知らないけど、ひとつ思ったのは、禁止と欲望、禁止とエロティシズムって面白い、ということ。

いわゆる「カリギュラ効果」なのか…
(禁止や制限を受けると余計に興味や執着心が掻き立てられる心理現象。
残虐な内容から一部で上映禁止となった映画「カリギュラ」が逆に大ヒットしたことに由来する。)

禁止されればされるほど、手に入らなければ手に入らないほど、その対象の価値は相対的に増大し、それは神性を帯び、美化され、魅惑的に、神秘的に誘いかけてくる。

対象(この映画では灯台の上階や女性)そのものの価値が増すわけではないから、すべては人間の想像力が創り出したもの、人間の内から出たもの、とも言える。

入手困難な品物はますます欲しくなるとか、映像にモザイクがあると余計に興味が掻き立てられるとか、「制限を課される」ことと「想像の余地がある」ことはすさまじい効果をもたらす。

孤立した閉鎖環境であればなおさら。

憧憬も、恐怖も、信仰もまた、人を突き動かし、ときには狂わせる想像力。
これらは諸刃の剣で、毒にも薬にもなる。

閉鎖環境で人間が徐々に狂っていく話は大好きなんだけど、これは思ってたのと違った。

実際にあった出来事に基づいているのだから、神話やメタファーを多用せず、もっと具体的で実録的なものが見たかった。

それに、メタファーがあからさま過ぎるからなのか、おそらくパンフレットに正解が書いてあるからなのか、それとも他の理由なのか、観た人の解説が(解釈自体は面白いのだけど)どれもほぼ同じになっていて、解釈の多様性に乏しいというのか…その点もつまらない。

神話では、その後プロメテウスはヘラクレスに救い出されて、結局はゼウスと和解するのか…
そこまで知らなかった。
勉強になりました。

オマージュされている昔の映画を観てみたり、神話や関連本を読んで知識を増やしたり、そういう楽しみ方をするにはいいかもしれない。
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