ベンジャミンサムナー

ライトハウスのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.0
 登場人物が閉鎖的な空間で狂気に染まって行く話は監督の前作『ウィッチ』と同じだが、船を正しい方向へ導く灯台を管理してる人たちが正気を失っていくというのが、とても皮肉がきいてる。

 それに、ロバート・パティンソン演じるウィンズローが木こりの仕事をやってたというのは、『ウィッチ』が森が舞台の映画だったことと関連付けてるからだろうか?

 そしてこれまた『ウィッチ』同様、エガース監督は役者から狂気の演技を引き出すのも上手い。
 ウィレム・デフォーはこの手の怪演はお手のものだと見る前から分かってたが、驚かされたのはロバート・パティンソンの方。
 特に、ラストのノドチンコがはっきり見えるくらいの強烈な光を浴びながら音割れた絶叫をあげる場面は「マジで狂ってしまったんじゃないか?」と戦慄させられる。

 ほぼ正方形のアスペクト比の画面で、幻想的でありながら不気味なモノクロ映像は、どこかフリッツ・ラングの映画を想起させられる。
 そして、よくよく考えてみると本作の話の構図はまさにフリッツ・ラングの『メトロポリス』と似ているところがある。

 灯台のてっぺんで"灯"(富)を独占する者と、その下でひたすら労働させられる者。
 下層の人間が反旗を翻した事によってメトロポリスは崩壊の危機になるが、"調停者"がいてくれたおかげでそれは免れる。

 本作は超ミニマムかつ、"調停者"のいないバッドエンドの『メトロポリス』とも言えるだろう。

 正気を保つために酒を飲んでるハズが、飲めば飲むほど現実と幻想の区別がつかなくなり、灯を求めたが故に破滅する事になる。

 色んな切り口で読み解ける話ではあるが、光と影のコントラストが強い画面が物語ってるように、「強い希望は一転してより深い絶望になる」ということかな?