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ライトハウスのSSDDのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.6
■概要
灯台守りとして年老いた熟練と若い未経験な男が小さな島に4週間ほど滞在し管理する業務に就く。
年老いた熟練者は傲慢な態度を取り、若い未経験者は無口で愛想がない。
互いにウマが合わず、溝が深まる中あと1日で帰還というタイミングで大嵐が起こる。
取り残された二人はいつ帰れるともわからぬ状態で閉じ込められていく…。


■感想(ネタバレなし)
二人の男の閉塞された中で過ごす中、心の闇がざわめき出しいつしか吐露し、露見してからはもう止まらずに狂気と化していく様を淡々と描かれていて、時間の概念や虚構と現実が観ている側にもわからなくなっていく没入感の強い作品でした。

モノクロで全編描かれ、真四角な画角を取ることで人物たちの閉塞感や圧迫感をより色濃く感じられますし、時間軸がわからなくなっていきます。
また画角を真四角にしたことで、灯台の縦に長い構造を捉えやすく、この映画の固執される灯台というものが強調され人が小さく感じるため効果的な魅せ方だと思います。

虚構の時の映像も素晴らしいし、ウィレム・デフォーの狂気に満ちた語りは息を呑むほどに魅せられました。

アーティスティックというより、人の狂気を近く感じられる恐ろしい作品で、私は好みでした。










■感想(ネタバレあり)
実在するイギリスの灯台「スモールズ灯台」で1801年に実際に起きた事件がベースに作られているそうで、過酷な業務の中一人が事故死。
腐っていく死体を海に破棄した場合に殺人を疑われるため棺桶を作るが、嵐によって破壊されてしまう。
そのため仕方がなく灯台内に死体を入れ、数ヶ月を過ごした。職務から解放されるときには男は精神崩壊状態だったとのこと。

あれ?二人の男の争いより、腐敗した死体と対話して狂っていく男の話だったほうが直接的暴力ではないもっと恐ろしい作品になれたのではないかと考えてしまいました。うーん、真実の方がインパクトがあるような…。

ただ、本作では熟練者が語る海の神のクトゥルフ神話のような怪物になる描写や、カモメを殺すことで呪われたという言葉が強く若者の心に根付き幻想を見せ始め、最後には呪いだったと言わんばかりに生きたままカモメに食われるシーンで終わるのは素晴らしかったです。

間違いなく怪作で何年後に観ても、魅力的な作品であることは間違いなさそうです。
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