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ナポリの隣人のpanpieのレビュー・感想・評価

ナポリの隣人(2017年製作の映画)
3.8
家族とうまくいっていない孤独な老人ロレンツォが隣に越してきたミケーラとその家族と次第に心を通わせていく。
微笑みを忘れていた彼に明るく接して忘れていた家庭の暖かさを思い出させたミケーラは思いもしなかった事件に突然巻き込まれ、その後の進む方向は想像と全く違い私は置いてきぼりを食らった。



↓ここからネタバレあります。↓






一家心中って外国でもあるんだと知った。
ただ日本のように一家心中という括りはなくあくまで殺人。
ファビオは日本人的に自分が死んだら残された家族の事を想って殺した訳ではないと思う。
その前の様子から変だったし。
思いつめていたのかな。
それともまた何かにキレて衝動的に行動したのかもしれない。
あの街中で突然キレた夫ファビオを見た時発達障害だったのかなと思った。
他人とうまく関係を結べないのに友達が欲しいと屈託無く子供の様な笑顔でロレンツォに話す。
ファビオやミケーラの力になりたいと思ってロレンツォはファビオの働いているところへ孫を連れて会いにいったのかもしれない。
もしかしてファビオがキレてる時のミケーラと子供達が怯えている様子を見たからかもしれない。
子供の頃に金を払って友達になってと言った事があると話し、ぶらっと入った店で自分の昔のおもちゃを見つけて大金を払ってでもどうしても手に入れたいと話すその男はどこかおかしかった。
あのおもちゃのシーンはそこでブツッと場面が変わったので店主を殴ってあるいは殺しておもちゃを手に入れたのかもと想像してしまった。
それを確信したのはファビオの母とロレンツォの会話から。
親友を崖から落としたって普通言う?
しかもそれを何年も経ってから母親にあれは嘘というのも変。
あの母親役がグレタ・スカッキと気付いたのは観終わってキャストを調べてから。
全然分からなかった。
グレタ・スカッキ、なんの役だった?不倫相手?と思ってしまった。笑
それ程の変貌ぶりに美人にも老いは平等に訪れるんだなと思った。
逆に美人だったからこそ凄い勢いで老いは訪れると感じるのかもしれない。
老弁護士はその男の何処か孤独な様子に自分を重ねたのか、その男の妻との交流から恋愛感情ではなく実の娘の様に思い、このうまくいっていない家族とかつての自分の家族とを重ねてしまったのかもしれない。
ミケーラは撃たれて機械に繋がれ辛うじて生きているが、このまま死ななければまるでうまくいっていない実の娘との交流が取り戻せるかの様にロレンツォは父親に成りすましてつきっきりの様子はどこか常軌を逸していた。
あんな事がなければ娘ともうまく行っていた筈。
だからミケーラが死んでしまったら心が折れてしまったのだろう。
その後消えた父親を心配して探す娘と息子はそれぞれ父に対する気持ちが違っているところが母親の死後の父親に対する気持ちを物語っていた。
自分が不倫してそれが原因で妻が死んでしまったとしてもそれを許せない子供の気持ちは理解できたがそれで意固地になっている父親の気持ちが分からなかった。
家族というものは時にあたたかいが家族だから故に許せなかったり自分が悪いのに素直に謝れなかったりするのも分かる。
厄介だな。
金の無心をするエレナの弟サヴィオも実家で本ばかりパラパラめくっていたのはお金が挟んである事が分かっていたから。
弟も十分病んでいた。
悩んだ末に父の元不倫相手に会いに行くエレナにどうなっててももう関係ないから知らせないでと言い放つ不倫相手も都合よくふらっと現れたロレンツォに憎しみを持っていた様に思う。
ロレンツォが会いに行った時パンツ一丁の若い男の子が一瞬映ったけど彼はまさか子供?
だとしたらその後苦労した事だろう。
なんか色々怖かった。

通訳で忙しく働くシングルマザーのエレナの過去も可愛がっているが生まれた孫もロレンツォのわだかまりの一つなのかもしれない。
父を見つけてやっと横に腰を下ろすエレナにロレンツォがゆっくりと手を握るラストは良かった。
隣人一家と心を通わせた事によって孤独で頑なだったロレンツォの心の氷が溶け、絆を取り戻すべく歩み寄る姿を見てそれまでざわざわしていた私の心も少しあたたかくなった。
いつも陽気なイタリアのイメージと異なっていた今作でごった返している街中や落書きが多くて驚いた。
ナポリの細い路地を車もバイクも人もごった返していて、整然としている日本とはあまりにかけ離れていて束の間異国気分を味わえた。
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