mimitakoyaki

シシリアン・ゴースト・ストーリーのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

3.9
内容はほとんど知らずに見に行ったら、かなりヘビーなお話でした…
しかも1993年に実際に起きた事件をベースにしてるというのを知って衝撃を受けました。

13歳の少女ルナは同じクラスのジュゼッペくんの事が好きで、その日も学校の帰り道、ジュゼッペが森に寄り道してるのをこっそりついて行って、ラブレターを渡すんですね。
これがほんとに初々しくて甘酸っぱい初恋って感じで可愛らしいんですよ。
ジュゼッペもまんざらでもなさそうだし、2人でキャッキャとはしゃいで、ルナのトキメキが伝わってきます。

ところがその翌日からジュゼッペは学校に来なくなって、誰も事情を知らないというけど、どうやら失踪したらしく、ルナは心配でいてもたってもいられずに、必死で手がかりを探っていくんです。

ジュゼッペの事が頭から離れる事なんてなくて、会いたくて、ずっとずっと思い続けて、でもそんなルナの気持ちを家族も周りも分かってくれないし、関わるなくらいの感じで言われるしで、ルナの心は閉ざされ孤立して深みにはまっていきます。

夢か幻想か現実か、その境界が曖昧になってきて、ジュゼッペとルナの魂だけが互いを求めて彷徨うようなイメージです。

森も丘も湖も静かで穏やかで美しい。
そして、2人の極めて純度の高い心とは対照的に、現実はおぞましく、子どもの力ではどうする事もできない深い絶望があって、それがとても恐ろしかったです。

とても悲しく切ない話ではありますが、自分を想ってくれる人の存在が命綱になり、ただその人のことだけを思うために生きて、そしてその魂どうしが繋がって触れ合えて、誰にも立ち入ったり侵すことのできない、2人だけの結びつきがとても美しかったです。

静かな作品ですが、ホラー的な音の使い方や不穏な映像も怖くて緊張しました。

ジュゼッペくんの役の男の子がまたギリシャ彫刻だか少女マンガに出てきそうな綺麗な顔立ちの子で、乗馬してる姿なんて天使のような麗しさですよ。
ルナちゃんも凛としてて、大人の決めつけやごまかしや諦めに堂々と反抗し、自分を貫く強さが素敵でした。

8
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