こんな苦しみ、全然出会えない。
少し吐き気がしてしまうほどだった。
あまりにも救いのない結末と、少女たちの笑顔、寄せては返す波。
もう私は完全にキャパオーバーで。
"彼は私の全てなの。
寝る前には涙が出るし、
いつも考えてしまう。
どういうことかわかる?"
およそ25年前の事件を風化させないためにつくられた本作。
シチリアという地域は、かなり特殊だ。正直、私には遠い国の話と感じてしまっても誰にも責められる筋合いはない。
それがこれほどまでに自分ごととして苦しんだのは、純粋すぎるほどの愛がこの映画を支えていたから。
主人公は誘拐されたジュゼッペではなく、1枚の手紙に全てをかけたルナだった。
映画の構成として完璧だ。実際の残酷な事件とラブストーリーとファンタジーをこれほどまでにリアルとして描けた作品が他にあるだろうか。
観客をちゃんと連れて行く。自然にルナの目線と重なる視界。
突然消えた恋人が何故いなくなったのかを探る映画はいくらかある。
けれども今の社会に極めて必要なのは、消えた恋人を探し求めてなんでも出来てしまう、たったひとりの少女だったんだ。
彼女が世界を動かす。確実に動いている。
パンフレットで、ルナが水に触れる度ジュゼッペに近づくという解説があり、悲しすぎてまた胸が苦しくなった。
"ルナ、眠っちゃいけない。"
天使のように美しいジュゼッペは、ルナを生かして水に散った。
何とでも言えるからこそ、言わせてほしい。そんなの絶対に間違ってる。
映画として本当に質が良く、社会的に意義があり、間違いなく不朽の名作として残ると思います。
本当に、苦しい。
湿っぽく不穏なシチリアを私は、ずっと覚えているでしょう。