螢

シシリアン・ゴースト・ストーリーの螢のレビュー・感想・評価

2.8
1990年代に実際にシチリア島で発生した少年失踪事件を題材にして、離れていても魂で繋がるような少年少女の一途な恋心を幻想的な映像で描いたラブ・ストーリー。

お互いに淡い恋心を抱いており、気持ちが通じ合った13歳のジュゼッペとルナ。
けれど、その次の日に、ジュゼッペは失踪してしまう。その理由を誰に尋ねても大人たちは口をつぐむ。ジュゼッペの家族でさえも。その裏には、子どもではどうにも出来ない陰惨な出来事があって…。

映像は確かに幻想的です。季節が巡っても、ずっと自分を思って、そして、必死に探してくれただろうルナの存在を思い、せめて魂だけでも…と思っただろうジュゼッペの気持ちには心が痛みます。

けれど、辛い現実から束の間逃れるように空想の中で寄り添う少年少女を写す、その静かで幻想的で物悲しい映像よりも、同時進行で描かれる現実の凄惨さと残酷さばかりが迫ってきて、気分が悪くなってしまって、個人的にはどうも受け入れられず。(私の猟奇的なものが嫌いという性質のためもあるでしょうが)

なにより、非業の死を遂げた少年への追悼の意を込めて同郷の監督が撮った作品だということだけど、そうでしょうか?衝撃的な事件に、恋愛を絡めて幻想系ホラーに仕立てたかっただけのような。

本当に追悼する気なら、あのラストシーンは酷い。というか、してはいけない気がします。
事実に基づいて描かれたジュゼッペの最期が悲惨なのはそうだったのだろうか…と、まあ、飲み込ます。
けれど、純粋にフィクションであるその後のシーンを、わざわざ、死者に鞭打つような、はたまた追い討ちのをかけるようなあんなシーンに仕立てたことは、個人的には犠牲者への冒涜のように感じました。
救いのない凄惨な環境の中で、彼が切望したはずで、けれど叶わなかったことを、あんな風に見せつけるかのように表現するなんて…と思ってしまいます。

このラストシーンがゆえに、私はこの映画を人に勧めることはしないと思います。