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シシリアン・ゴースト・ストーリーのplantseedsのレビュー・感想・評価

3.7
終始幻想的な美しさと、それと相反する暗さが共存していく作品。

実際の事件をもとに描かれている作品。
この事件の詳細が最後にくるのですが、観る者打ちのめすその出来事。
どういう事件だったかはきっとググれば出てて来ると思うのですが、この作品を通してこの事件を疑似体験するのとでは、感じ方は変わってくると思います。

それを、よくある社会派作品として、ド直球に描かず、
あえて、主人公のルナとジュゼッペの、二人の視点から描き、この幻想的な世界観でまとめているのは、ある種正解なのかなと思いました。

事件単体としても、ショッキングな出来事ではあるのですが、
二人の関係性を通してこの事件を見つめると、
異様なまでに、その事実がエモーショナルに自分の中に迫ってくる。
この、「エモ度」が全然変わってきます。

行方不明になったジュゼッペを、純粋な思いで探すルナ。
周囲の大人たちは、何でも知ったような口で、知らないふりをかまし続け、事件などそもそもなかったのだと、取り合おうともしない。

個人的にはここが1番の胸くそで、
自分の保身にしか興味がない大人。自分は関わりたくないと、知ったかをかまし続ける大人。

世の中を上手く渡り歩くにはそういう、「建前」や「忖度」といった要素がついて回るのはしょうがないのかもしれませんが。
今作を見ていて、そういった、「自分は関係ない・知らない」という態度を、見つめなおすきっかけにもなったかなと思います。
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