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愛と銃弾のakrutmのレビュー・感想・評価

愛と銃弾(2017年製作の映画)
4.7
ナポリを舞台にマフィアの内部抗争をコメディタッチに描いた、マネッティ・ブラザーズ監督のミュージカル映画。イタリアではミュージカル・コメディの作り手として有名だそうで、本作ではクライム・サスペンスとミュージカルという、油と水の関係と思えるようなジャンルの融合に挑戦しているが、これがなかなか面白くて、エンターテインメントとして完全に成功している、個人的にはかなり気に入った映画である。さすが、新型コロナで外出禁止令が出ている中でも歌うことを忘れないイタリア人だからこそ、こんな映画が撮れて、それが様になるのであろう。

映画の冒頭から、マフィアの抗争で亡くなったボスの葬式でいきなり棺の中の死体が歌い出すわ、ナポリのスカンピア地区というマフィアの巣窟となっている危険な地域でひったくりに会ったツアー客たちが歌い出すわで、映画の世界にぐっと引き込まれる。ストーリー的には、マフィアのボスであるヴィンチェンツォの秘密を守ろうとするロザリオと、昔の恋人だった女性ファティマを守ろうとするチーロという、ボスの腹心の部下である二人が繰り広げる抗争が描かれるが、多くの場面でカンツォーネをベースとしたミュージカル・シーンが印象的に挿入される。

特に印象に残るのが、ヒロインのファティアを演じたセレーナ・ロッシ。舞台ミュージカルでデビューして、歌手としても活躍する彼女の歌唱力は見ものである。チーロと久しぶりに出会う場面では、80年代のダンス映画の名作(だと個人的に思っている)『フラッシュダンス』のテーマ曲である「What a Feeling」のイタリア語による替え歌を圧倒的な歌唱力で披露してくれる。また、ボスを演じているカルロ・ブッチロッソのコミカルな演技も見どころである。

以上、ナポリの美しい風景とともに、頭を空っぽにして単純に楽しむのにオススメの映画である。
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