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教誨師のこたつムービーのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
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玉置玲央がとてもよかった。
ちょっとプロダクション方向から感想を。


この映画は会話劇で、会話劇ということは役者のレベルを白日に晒すことを意味する。
それも彼らは死刑囚と教誨師なわけで役不足はありえず、言い訳が効かない。要するに、役者の演技が完全に試される作品である。

で、6人の囚人と大杉漣が配置されるが「濃淡はある」な、とは正直感じた。

面白いのは役者7者7様、その仕立て・メソッドの違いだ。いちいちの内訳は割愛するが、総じて(日本映画お得意の)役者のこれ見よがしなオーバーアクトの領域には入っていない。そこは心底ホッとした。

低予算からの逆算なのだろうが、1時間絵がわりせず教誨室のシーンがつづく。これは正直キツいが、前述の役者演技が惨憺たるものなら、オレはこの映画を完走できなかっただろうと思う。

脚本では、実は肝心の教誨師が立体感に乏しく、この映画が「単調」に映る要因にもなっているが、音楽で言えば「メロディのない四つ打ちビート」であり、それはそれでオーライ・・かな・・甘めに言えば。
Sマックイーンの「ハンガー」を思い出した。


「原案」を監督のものとしているが、これは堀川恵子の傑作ノンフィクション「教誨師」の影響下にあることは、明らかだ。随所に堀川恵子の「教誨師」から採ったものが散見する。よってオリジナルというには、ちと恥ずかしいぞ、監督さんよ? むろん相模原のあの事件を入れ込み、最後のグラビアに込めたものはこの映画のメッセージだが。パクったらパクったとちゃんと言おうぜ?とは思うね。

で、堀川恵子の「教誨師」から入ったオレとしては、ラストの絞首刑はちゃんと「原作」どおり冷徹に見せてくれ、と思った。
それと、これが「初」の執行であることに対して大杉漣が掘れてない。なんであんなに毅然としてるんだ? 初の執行だぞ?

もっと言えば、教誨を始めて数年の牧師、という設定を、この映画自体がラストにかけて「忘れている」ことが弱いのだ。よって牧師が「単調」に映るわけで、テーマを伝えるための「お飾り」に堕してしまっている。


なーんか歯切れ悪いレビューになってるが、佳い志の作品なだけに、もったいないとこがあるんですよ。そんな点を述べた。
それと日本映画だと関所が上がってしまうのはオレが日本人だからである。