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教誨師のkassyのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
3.9
大杉漣さん最初で最後のプロデュース作品。

教誨師とは、死刑囚の宗派に合わせて心の救済や彼らを改心できるように導く人であり、死刑囚に対して身内以外で唯一面会できる人間である。

1つの部屋で死刑囚と対話する教誨師というワンシチュエーションでほぼ物語が進む。
画面に動きはないが、大杉漣さんと死刑囚6人との対話は見応えがあり、飽きさせない。会話していく中で死刑囚達の人となりや性格や本性がどんどん露わになっていき、教誨師本人のパーソナリティや背景もまた丸裸にされていく。
死刑囚達はそれぞれ芸達者な役者さんであり、それぞれ見せ場もあるが、中でも高宮を演じた玉置玲央さんの異質な存在感が印象的だった。演劇界では既に活躍されているが、意外にも映画は初出演だそうだ。これから映画に活躍の場が広がっていっても良さそうだ。

教誨師という職業を通して、死刑という制度について、また死と向き合うことは生と向き合うことだという事を改めて考えさせられる。
重たい職業だが…だからこそする意味があるのだろう。
彼が教誨師を通して得た、改心ではなく穴を見つめよりそう、という気づきが深く印象に残る。
「生きている意味なんてない。生きているから生きる」
ハッとさせられる重い言葉が沢山あった。

大杉漣さんは狂気と優しさを併せ持つ俳優さんだったが、この映画では慈悲深くも迷いながら教誨師をする様を実直に演じられている。大杉漣さんの良さを感じられる遺作に相応しい役柄だ。

遺作となってしまったのは本当に残念だが、これが遺作になったことで脚光を浴びたことは幸運な事なのかもしれない。
とても見応えのある作品だった。
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