マクガフィン

教誨師のマクガフィンのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
3.5
死刑囚と教誨師の密室対話劇。

死刑囚は、虚言癖がある者、スノビズムで論理武装する者、処刑の延期を画策して利用しようとする者、現実逃避する者など一癖も二癖もある者たち。いちいち個性的なことが面白い。

教誨師は受けに徹するが、死刑囚の本心が見えてこない事への対応は、死刑制度に関わる人々の負担の大きさのメタ的にも。次第に本心が垣間見れるようになると異質な違和感が生じて、死刑囚に感じることが上手い。
現行の死刑制度の矛盾などの哲学を含むこともあるが、何気ない会話や死刑囚たちの暇つぶし的なことが作品に味を加える。

烏丸せつこのバイタリティ溢れる関西弁は、「カメ止め」の竹原芳子、「寝ても覚めても」の伊藤沙莉を髣髴させ、小部屋に収まらないような、自由奔放な会話が印象的でアクセントにも。

死刑囚の対話だけが淡々と繰り広げられるが、終盤の限定空間から解き放たれることによることを描写することで、限定空間が閉ざされた死刑制度のメタ的にも。しかし、画面アスペクトの切り替え、幽霊やオカルト描写、ラストのボカシ描写の映像描写は如何だろうか。

様々な会話を通して、人が人を裁く死刑制度の是非を深層に問いかける事に対するメタ的な構図には喚起されなかったが、興味が尽きない会話の面白さに魅了される。