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教誨師のawのネタバレレビュー・内容・結末

教誨師(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

前から気になっていたのと、
他の方のレビューが良さそうだったので、
予定を少し変更して大杉漣さんに会いに行ってきました。


さて、この映画。
観終えてから少し時間が経ちましたが、
「作り手は何を訴えたかったんだろう?」
「これを見て何を感じてもらいたかったんだろう?」
ということがうまく整理できていません。

色々と考えさせられる内容です。
ですが、
「これを感じろ」
「こう見ろ」
というような、
何かを強烈に訴えられた感が希薄です。

僕には響かなかった、いうことかもしれませんし、それが狙いなのかもしれません。

ただ、スッと腑に落ちていかないのです。

死刑囚を扱った映画ですから
命を奪うとは、命を奪われるとは、
その罪の償い方は、その罪をどう背負うのか
が描かれているのかと思うと、決してそうではないように思うのです。

死刑制度の是非を問いかけるでもなく、
感動の更正物語があるでもなく、
罪人の善悪の葛藤とかが描かれるでもなく.
....
ただ、そこに死刑囚がいて、
教誨師という役割の人がいる。

その、とあるひとりの教誨師の、
ある期間に起こった出来事を見届ける。
そんな感じです。
ドキュメンタリーみたいに。

「ただこういう役割の人がいる。そういうことを知って欲しい」
ということが、この映画の主題だったのか?
なんて風にも思っています。
かなり穿ってると自覚はしてますけどね。


ただ、今も疑問に思っています。
「これはリアルなのか?」

皆さんはどう感じられましたか?

私は、これがリアルな姿だとは思いたくない。
代表的な例を脚色したフィクションであると、あって欲しいと思っています。

こう思うのは、僕の置かれている状況も影響しているかもしれません。
ですので、以降、この映画の評価はかなり偏っています。‬


さて、映画の仕組みの話。

死刑囚は様々な年齢・性別の人がいて、何処かで聞いたことがあるような犯罪をモチーフにしているようです。

その死刑囚たちの素性や犯した罪が会話の中で徐々にわかるようになっていく。その中で主人公(教誨師)のことも少しずつわかっていく。

情報を出しすぎず、会話の中に含まれる断片的な情報から観ている側に想像させるように仕向けているのも、見ている側の興味を引くことや飽きさせない仕組みとして成功していたと思います。


ただ、この映画ではその犯罪の内容だとか、良し・悪しだとか、そういうのにはあまり深くは触れていきません。

そして、死刑囚がその犯罪・結果対して
「どう向き合っているか」
というよりも
「どう向き合っていないか」
が描かれています。

もしくは、
「一度は向き合ったが、向き合うことから逃げ出して、結果、目を逸らして生きている様」か。

主人公である教誨師が
目を逸らさず向き合いましょう。
向き合った結果救いが訪れます。
というように語りかけますが、
結果は...。


このあたりの描き方の評価も
僕の中であまり整理・評価が
うまくできていないのです。




僕は、
死刑囚は、
罪を認識し、
被害者に申し訳ないという気持ちを持ち、
自分が間違っていたと認識し、
その後に刑に服して死んでいって欲しい。
というような希望を持っています。

ですが、本作での死刑囚は
罪を償うとか申し訳ないとか
被害者側に対しての思いなどなく、
自分の犯した罪に対してさえ
未だに正当性を主張したり
自分の好き放題に解釈する。

他人の命を奪っているくせに
それは遠くに置いておいて
「自分が死ぬのはいや」
という
あまりにも醜い存在として描かれます。

途中、
「本当にこんな奴らなら
さっさとと刑を執行してしまえよ」
とか、その逆で
「罪を認識するまで刑を執行せず、
いつ執行されるかわからない恐怖に震えながら生きてやがれ」
なんて風に思いました。




僕は「犯罪者を殺してやりたい」と
強く思ったことが過去にある人間です。

大切な人を殺人犯に殺されたことがある人間です。


ですから、余計に死刑囚側の立場に
感情移入なんてできないのかもしれませんね。


これがリアルな死刑囚なのかどうか。
私にはわかりません。

が、
ここで描かれているのがリアルだとすれば
やっぱり僕にとっては気分が悪いのです。



そうそう。
この映画、「犯罪被害者側の気持ち」
も表立って出てきません。

描かれている死刑囚は
基本的に罪の意識に乏しい人たちで、被害者の気持ちなんてわからないか、わかろうともしない。
そんな人たちです。

そこに「被害者の気持ちもわかれよ」
みたいなことは強くは言わない。
教誨師も、この映画も。

教誨師という役割が
本来そういうものだから
なのかもしれませんね。



リアルさ、というところで言えば、途中、回想シーンや幻が現れるシーンがありましたが、ずーっとあの建物の中だけで進める方が良かったように思います。

そういうこともあって、登場人物にリアルさを感じず、誰かに特に感情移入することもなく、見届けることになりました。

もちろんみなさん演技は上手で、自然な感じが出ていましたが、なんていうか「人間としての深み」が足りない感じ。
そんな風に思いました。


いろいろ書いてきましたが、うまく整理できていませんので、また改変や追記をしたいと思います。

僕はこの映画を好きになりたいけど、まだ好きになれない。そのためにもう何度か見てみたいと思います。
aw

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