GOROTUKI

教誨師のGOROTUKIのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
4.0
自宅の本棚は、自身がジャンル分している。その中ノンフィクション棚にすぐいつでも読めるように置いてあるのが2014年発売の堀川惠子著「教誨師」である。
この本は、28歳頃から78歳をお過ぎになられて半世紀以上教誨師をやられていた渡邉普相さんのインタビューをまとめ、ひとりの僧侶の目に映った「生と死」を記した名著である。この本は渡邉さんが「この話は、わしが死んでから世に出して下さいの」と言われ、
その言葉を尊重し没後、出版されたのである。そして、本作2018年2月21日に亡くなられた大杉漣さんの没後、公開された作品。
では感想

教誨師の歴史は、真宗大谷派の僧侶城西寺啓潭が名古屋監獄(現・名古屋刑務所)の前身である徒場に囚人教化を請願し、明治5年(1872)7月に認可を受けて実施したことに始まり、教誨活動自体は平安、鎌倉時代から行われていたとされ、かつては牢屋にお坊さんが話しに行ったことから始まったのではないかと考えられている。戦前の教誨師は国から手当が支給されていたが、戦後発布された日本国憲法によって政教分離が確立されるようになり、宗教家による教誨活動は完全にボランティアになったそうです。頭が下がります。現在(平成30年1月現在)神道系、キリスト系、仏教系など1846人の方が宗派など各施設にバランスを考えて振り当てられている。全国教誨師連盟調べ
「教誨」は、強制ではなく被収容者からの希望により行われ、教誨は一回あたり短くて20分〜30分、長くて1時間ほどで、一緒に念仏を唱えたりなどするそうです。

本作は、大杉漣さんの最初のプロデュース作品にして最後の主演作、さらには膨大なセリフ量故、「役者にケンカを売っているのかと思った」と自ら評したオリジナル脚本は、初回のリハーサルから大杉さんは、ほぼセリフが入っていたという。役者根性!^_^
特筆すべきは、限定された空間の中での会話劇が中心の本作は、椅子に座り対峙する為、役者自体の動きが限定され、表情筋、目線、手の仕草で表現しなければならず、役者さんの演技棚の数々が披露され役者は一日にして成らずだなぁと思い知らせた。
とくに、
転形劇場の大杉漣さん!VS劇団柿喰う客の玉置玲央さん!
転形劇場の大杉漣さん!VS青年劇団の五島岳夫さん
転形劇場の大杉漣さん!VSクラリオンガールの烏丸せつこさん
などなどは見ものです。
ただ「VS」と書きましたが、
74年から舞台経験を積んでいる大杉漣さんが、後輩役者の演技を大きなキャッチャーミットで待ち構えいる様にも見え懐の深さを感じもしました。

そんなこんなで
監督インタビューにて
「死刑囚は「死」を持って罪を償うわけですから、懲役刑や禁固刑と違い、拘置所にいる間は宙ぶらりんな状態で、死を待っている。それってものすごく特殊な状況だと思うんです。でも死が訪れるのはすべての人に言えることで、そう考えると我々だってそう変わらないのではないか。」を読んで、
本作の死刑囚高宮真司のセリフ
「暇つぶし」が頭をよぎった。
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