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教誨師のhiyoriのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
3.7
大杉漣の遺作にしてキネマ旬報ベストテンにも選ばれた作品。この映画の最も大きな特徴として、面会室における死刑囚との対話が全編の9割以上を占めていることだ。やや異色な形で強引でも、物語としてのプロットに引きずられないところに、作り手の気概と邦画の真の魅力があると感じた。ただそれだけ観る側にも覚悟が必要だというところが邦画と人々との距離感を生んでるとも言える。そのようなことを一番感じる映画だった。
その構成故に役者の演技に委ねられているところは非常に大きかったが、それに十分対応できていた。死刑囚側も大分癖のある役者が揃っているのだが、やはり大杉漣の演技は素晴らしい。他者を死と向き合わせる教誨師から、自らの罪と対峙する一人の人間への変化を受けの演技だけで表現した。刑を執行することが贖罪ではないから、死から目を背けても自ら自分を裁かなければならない。その矛盾が彼らに与えた代償は大きい。
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