とえ

クレアのカメラのとえのレビュー・感想・評価

クレアのカメラ(2017年製作の映画)
4.0
69分のとても短い作品だったけど
面白かったなぁ

映画会社で働いているマニ(キム・ミニ)は、カンヌ映画祭に出張中に会社をクビになってしまう
帰国の飛行機まですることがなくなってしまったマニは、カンヌを観光
その間にフランス人のクレア(イザベル・ユペール)と知り合い、友達になる

異国の地で知り合った人と親しくなる彼らを見ていると
人と人との出会いには、化学反応があるなぁと思った
その化学反応にも、良い結果と悪い結果がある

マニと映画監督と社長の3人の出会いは、悪質な毒ガスが出て、周りに悪影響を及ぼしちゃうような悪い化学反応

そこへ、クレアを投入すると
「私が写真を撮ると人生が変わるわよ」
の言葉の通り、彼らの人生が変わり始める

マニと社長にとって、クレアとの出会いは、良い化学反応だったけれど
映画監督にとって、クレアとの出会いは悪い結果をもたらすことになる

そんな彼らから見えてくるのは
女性たちのたくましさである

出張先でいきなりクビになるなんて、ちょっと立ち直れないと思うけど
マニはどんどん外に出て、フランス人と友達になり、前を向いて生活をしている

社長もまた、たとえ男に捨てられても、あっという間に吹っ切って、仕事に邁進する

ところが、優柔不断なダメ男の映画監督は、クレアと出会う前以上に未練タラタラに生きていくことになる

そこで思うのは、確かに人との出会いは人生に化学反応をもたらすけれど、本人が前向きか、後ろ向きかで、化学反応の結果も変わってくるということ

クレアとの出会いは、
前向きに生きていこうとする彼女たちに
前向きな反応をもたらしたけれど
いつも、過去に未練がある映画監督には、後ろ向きな反応が出てしまったのだ

このキム・ミニとホン・サンス監督の4連作には、毎回、監督の分身となる優柔不断なダメ男が出てくる
それに対してキム・ミニは、いつもイキイキと輝き、最後に希望を感じさせる終わり方をしてきた

毎回、そこに二人の関係性が投影されていて面白い
そして、毎回「しっかりしろ、ホン・サンス!!」と思うのだ(笑)

それに加えて今回は、イザベル・ユペールというスペシャルゲストが嬉しかった

なるほど、確かに彼女は「人の人生を変える」パワーを感じさせる人である
そのユペールと並んでいても、何の遜色もなく、友達役が自然なキム・ミニもすごいなと思った

人との出会いも大切だけど、自分自身が前を向いて生きることも大切だなぁと、しみじみ感じた作品だった
とえ

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