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甲鉄城のカバネリ 海門決戦のsanbonのレビュー・感想・評価

3.7
"ブリッジストーリー"として観れば"満点"の出来。

今作は、2016年にTV放送されていたアニメ作品の劇場版であり、恐らくは第二期製作前の"前哨戦"だったのではないかと推測した。

というのも、今作の内容全てがTVアニメ版で判明した要素のみを凝縮して、新たな設定に置き換えて展開するに留まっていたからだ。

今回のストーリーは非常にコンパクトにまとまっており「カバネ」に占拠され、廃駅と化した「海門」を「甲鉄城」を含んだ「連合軍」で奪還するという筋書きで、その中にまるで"おさらい"をするかのようにTVシリーズの内容を巧みに再構築して落とし込みを図っている。

つまりは、物語の核心部分としてはなんの進展も無い構成となっており、それをわざわざ劇場作品として展開した事になる。

3年の時を経て語られる最新作で、しかも劇場版なのだから、"完結編"を想起してしまうのが普通だし、もし"終わらせるつもり"なら必ず核心を突いてくる筈なのに、それをしない理由はただ一つ、この物語には"続き"があるからだ。

劇中でも、主人公の「生駒」が何度か口にする「これには身に覚えがあるぞ」が象徴するように、今作の目的は新たなストーリーで行うあくまで"復習"なのだ。

そして、復習だからといって一切の妥協なく作り込まれたストーリーは、劇場版のクオリティをしっかりと有しており、3年という決して短くはない年月を費やして語られるには十分の出来だと感じた。

また、作画のキレも冴え渡っており、1秒間の作画枚数が絶対的に増えている事が分かる動きの滑らかさと、アニメだからこそ表現が出来るアクションとカメラワークのアイデアが"豊富"に堪能出来るのも、映画としての醍醐味がしっかりと表現されている為、満足度としては申し分のないものであった。

更に、物語を"掘り下げなかったからこそ"出来る事を、この作品はきちんとこなしていた事が、今回は何よりも好印象だった。

それは、主要キャラクター全員に"見せ場"を作る事だ。

今作は、女性キャラクターが男性と肩を並べて活躍する姿が非常に印象深い作品で、甲鉄城の城主も女性、機長も女性、生活に欠かせない給仕役も女性、そして最大の戦力も女性と、男性キャラはあくまでサポート役として立ち回る事が多いポジションなのだが、今回はその全ての主要人物に68分という短い尺でありながら、なにかしらのスポットが当たるようストーリーが構築されている。

しかも、甲鉄城の見せ場までもがラストを締め括る"スペクタル"として用意されているのだから、その抜け目のなさは相当だ。

これも、新たな展開に焦点を絞らず最小限に抑えたからこそ為せたワザであり、短尺だからこそ注げる作画技術も逆に多く、その洗練具合もより際だって"相乗効果"を発揮していたと思う。

ただ、最後の''踊り"はダークファンタジーとして築き上げた趣きを台無しにするものだったので「アイドルマスター」や「ラブライブ」みたいなのが好きな方はアガる演出なのだろうが、僕は全く受け付けず興醒めだった。

女性が活躍するアニメだからといって、何故なんでもかんでも"偶像化"させようとしてしまうのか。

硬派な作品はあくまで硬派であってもらいたいものだ。

最後に、2019年11月時点で新シリーズなどの制作発表はまだ無いものの、ファンの方々は安心してもらいたい。

必ず続編は作られる。

今作の内容には、それを確信させる要素しか含まれていなかったのだから。

そして、まだ「甲鉄城のカバネリ」をご覧になった事がない方で、特に動画配信サービスを利用している方は、観るものに迷ったら次はこの作品を観る事をオススメする。

それも、あくまで"予習"として。