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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へのkouのレビュー・感想・評価

4.5
なりたい自分となれる自分の間にはどうしても違いがあり、その狭間の埋まらなさがもどかしく、そして苛立つ。そんな苦悩はいつしか、歳をとるにつれて和らいでいった。それでもまだ、自分のありのままを受け入れることはとても難しい。
今作は見ている人の心を突き刺す痛々しさを描き、そして最後には、肯定してくれる、そんなとてつもなく素晴らしい一作であった。

今作ほど、SNSの普及したティーンを上手く描いている作品はないと思う。youtubeやInstagram等、自己を表現するツールに溢れている。僕の学生時代はまだSNSがそれほど普及していなかったから、今作を見ると今の学生達の世界は大変だろうなと月並みだが思う。キラキラした周りの投稿、明るく楽しい部分のみが切り出されたそれらを、自分の現実と比べるのは辛いだろう。

今作の主人公ケイラは動画投稿で「自分らしく」や、「勇気を持って一歩踏み出す」事の重要性を語るが、現実では友人がいなく、周囲に溶け込めないでいる。彼女はどうにか現状を変えようと行動するが、うまくいかない。そのリアルさがなんとも苦しい。

そんな苦しみは過去の自分からのメッセージからも受ける。期待をしていた輝かしい未来と現実の違いは、失われた選択肢の一つを無くしたようで、心を締め付ける。そんな彼女を救うのは何か。暖かい光に照らされ、彼女を肯定してくれるのは誰か。その素晴らしい語りに感動した。

何気ない気持ちで見たのだが、見終わるとその素晴らしさに圧倒されてしまった。圧倒的なリアルさ、そして観ている観客の共感を生む、だからこその苦さを描いた傑作だと思う。このあの時のなんとも言えない辛さ、そして楽しさを描いている。
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