ちろる

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へのちろるのレビュー・感想・評価

3.6
学校では無口で存在感のないケイラはネット配信ではおしゃべりでサイコーにクールないけてる女子を演じてる。

なりたい自分と現実社会で他人から見られる自分と乖離していくことに苛立ちを覚えながらもそれを埋める術がわからないでいるケイラ。
その姿は一見滑稽だけど、この『自分がどう見られるか』ばかりを気にするこじらせ経験はきっと多くの人がどこかの経験するはず。
だからこれを観て彼女に共感する若者はたくさんいるだろうし、過去の拗らせた黒歴史掘り起こされて居心地悪くなる人もいるかもしれない。
こんなふうに目を背けたくなるほどに痛々しいリアリティを描けるのも、監督自身がYouTuberという経歴だからなのでしょうか。
スカッとするほどのラストでもなく、もちろんそれなりに自分の殻を抜け出せそうな希望も見え隠れするアンニュイなラストは、あなたがケイラならここからどうするの?という現代の若者へのメッセージにも見える。
私的にはお父さんーへたくそかー!とか、がんばれーとかお父さん応援しちゃったりしたけど、そんな親子関係の描き方もリアルで、全世代に響く作品となっているのが良い。

とにかくケイラ役のエルシー・フィッシャーの生々しい演技がこの作品にとっての宝で、かわいいけど、どこかオドオドしててなんか存在感ないのも分かるちょいダサな感じが痛々しくて、だからこそ応援したくなってくるのです。

全体的に盛り上がりには欠けるけど、それがまたなんかこの作品には合っていて、他のよくあるこじらせ青春物語とはまた違う後味を作り出していた気がします。
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