ツノメドリユージーン

ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~のツノメドリユージーンのレビュー・感想・評価

4.5
ホイットニーの人生、
本当に辛かったんだね。

映画が始まり、ホイットニーの声を聞くだけで本当に嬉しかった。
でも、兄がドラッグに招き入れて
次々に私生活が暴かれていく。

中盤からは、涙が止まらなかった。


高校生の時、幼い頃からミュージカルが好きでその流れで洋楽に興味を持ち、FMラジオを聴いていたら流れてきたのが、グレイテストラヴオブオールだった。
初めて音楽を聴いて涙がでた。
歌詞の内容も分からなかったのに…。急いでCDを買いに行き、この歌が~まず自分自身を愛することが最高の愛なのだから~という自己肯定、自己の尊厳の歌だと知った。私は何度も何度も聴いた。コンプレックスの塊だったから。(この歌は私にとってセラピーになったのに…この映画を観てこの歌をどんな思いで歌っていたのだろう。と切なくなりました。)
ホイットニーは、自分の見せ方を知っていたし明るく、堂々としていて、白人に対しても物怖じしていなかった。そのイキイキとした姿にものすごく影響を受けた。(白人の多い学校に行き、モデルもしていたからかもしれません。)
だから、彼女は人生を変えてくれた恩人なのだ。当時自分の黒人のイメージは、ステレオタイプなものだったので、(アメリカ映画が好きだったので、白人側から見たイメージ)アメリカ黒人の歴史を調べたり、ブラックミュージックに惹かれていった。ハリエット・タブマンやマルコムX、キング牧師、アレサ・フランクリンやグラディス・ナイトなど素晴らしい出会いをもたらしてくれた。
デビュー1年後からですが、日本で読めるインタビューは、ほぼほぼ読んできた。
なぜこんな自分語りをするのかというと、この映画が素晴らしいと同時にホイットニーに触れていないともいえるからです。
コアなファンからしたらこの映画がホイットニーの入門編になったら嫌だな。という思いがあるのです。あまりに悲劇のヒロインに描かれすぎている。彼女が心を開いた、ボビーはドラッグに関して口をつぐみ、ロビンの証言がないのでモヤモヤしますし。
ただ幼少時の性的虐待については、やっと腑に落ちました。
どうして、ドラッグに負けちゃったの?ってずっと思っていたから。シシーに言えていたら…従姉妹だなんてひどすぎる。(ディーディーが亡くなった時コメントがなかったのでおかしいなと思っていた。もしかしてアメリカではコメント出していたのかもしれませんが…。)性的虐待は、魂の殺人といわれています。
父親とのことも、パパっ子だった
ホイットニーには辛すぎたと思う。こんなに重荷を背負っていたなんて知らなかった。
そのことを知れたことは、この映画の功績でしょう。客観的に粘り強く隠された真実に肉薄した。

ただ、監督がホイットニーについて『濃いブラックミュージックというわけでも、特別クールというわけでもなかった。』とか『ホイットニーに関して知っていることといえばタブロイド紙の記事ぐらい』と語っているってことは、この人ホイットニーのLIVEに行ったことないでしょって腹がたってね~。(映像で観るのと生で観るのは違うと思う)
『ボヘミアン・ラプソディ』
『THIS IS IT』には愛があった。この映画は何か表層的だし、寒々しい。(リ〇コのレビューにも怒!以下略)私は、最初の来日と97年以外は全部行きましたが、ただ歌が上手いってだけの歌手じゃないんですよ。ポップだとかR&Bだとか超越していた。(マイケルもね。)全身全霊を込めて歌ってた。そして歌詞・言葉を聴き手に伝える力。巫女的な人だった。だから説明はできなかったんだと思う。理屈じゃないって言いたかったんじゃないかな。
ボディガードの翌年のコンサートなんて武道館の屋根に声をぶつけて、キラキラと音が降って来る感じでしたよ!
そして、信仰についても描かれていない。晩年ドラッグに溺れ、相当葛藤があったと思う。LIVEでも必ずゴスペルを歌っていた。最後の来日公演は声はガラガラだったけれどゴスペル『I Love The Lord』は凄みがあった。

神についてかなり踏み込んで語っていたインタビューもあった。

とはいえ、ホイットニーの映画
をつくってくれたことには
素直に感謝。

彼女が好きな言葉は、
『愛』と『美』だったけれど
この世では得られなかったのだろうか。

もう何を言ってもホイットニーはいない。喪失感しかない。
I miss you.

彼女の死後様々な追悼コメントがありましたが、一番胸に響いたローリン・ヒルの言葉を挙げておきます。
『人を亡くす事にうんざりしませんか?私はそうです。ならアーティストを愛して下さい。彼らがつまずく時はしっかりと支えてあげて下さい。今、人々はホイットニーに愛を見せ始めているが、これは彼女が生前に受けるべきだった。』