半月板損傷

ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~の半月板損傷のレビュー・感想・評価

3.5
そこそこブラックミュージック好きなクチなんですが、80年代はどうも手薄で。理由はディスコでポップでなんかピコピコしてて軽い感じがするから。別に嫌いってわけじゃないし聴けば聴くんだけどね。
んでこのホイットニーも丁度その80’sど真ん中なイメージで、俺のなかではSOULというよりPOPフォルダの人。
でも彼女のスーパーボウルでの国歌斉唱が伝説化している&商品化までされたみたいな話は何となく知っていて、今回改めてYouTube動画を観てみたらこれが確かに凄いのである。
アメリカ人でもない俺が部屋でボンヤリ聴いても鳥肌立つんだから、あの時代、リアルタイムで聴いたアメリカ国民が涙したってのもわかる気がする。

というわけで、ボヘミアンラプソディーに続いて80年代スーパースターのお勉強シリーズ第二弾のこちら、結論からいうと、ボヘミアンとは真逆のベクトルで心えぐられる強烈ドキュメンタリーだった。
ドキュメンタリー映画としての手腕は素晴らしく、黒人を取り巻く世相をざっと流しながらも軸がブレず、真に迫る構成だったと思う。

ただ、観るうえで留意しなければいけないのは、大いに語っている人物達の大半が「ホイットニーヒューストンで食ってきた」親族たちであるという点。
これは頭の片隅に置いておく必要がありそうだ。

以下は、内容についての感想。ネタバレあります。

ま、言ってしまえば完全に自滅だし、スターがドラッグで破滅する典型といえばそれまでなんだが、てっきり
「売れてスターになる→挫折、孤独、苦悩→ドラッグに手を出す」
のパターンかと思ったら...ヤクやり出すの早っ。

「実は幼少期のとある出来事が彼女の人生に暗い影を~」的な証言が終盤に飛び出すけど、まぁそれも何らかの影響はあったか知らんけども、被害者本人も加害者とされる人物もすでに故人なのでぶっちゃけ真偽のほども定かじゃないし、彼女を死に至らしめたヤクに関して言えば、完全に周りにいたアンタら兄弟やら旦那やらが揃ってヤク中だった影響でしょ。

毎日仲良くラリってた元旦那(ボビーブラウン)が
「このドキュメンタリーにドラッグはあまり重要じゃないだろ」
というムチャクチャ苦しい逃げ口上ながらも頑なに口を割らないのにはある意味男気を感じるが、
兄貴に至っては
「妹が先にマリファナをやりたがったから」
「仕方なく兄として手本を見せなければならなかった」
と真顔で自己弁護したうえ、
「ヤク漬けだったけど俺は今ピンピンしてる」とか
「ボビー(元旦那)はヤクでは雑魚だった」
などとドヤ顔で武勇伝語りだす始末。笑

プライベート映像なんかから受ける彼女の印象は、極端に気ムズカシイとか繊細すぎる感性の持ち主とかでもなさそうだし、特別貧困でもなく愛されて育ってるし、プレッシャーはあるにせよ孤独ではなく仕事も順風満帆だし、何より本人がすごくクセのない人というか...ほんと、普通の人って感じで。
それだけに、もう少しマトモな人間に囲まれていればと思わずにはいられない。

個人的にこの映画で一番衝撃的だったのが、激ヤセしたホイットニーがTV番組中に司会者に執拗に問い詰められてドラッグ使用を認めてしまう「大惨事」の映像。
これがもう、憑依した悪魔が静かに表に現れる瞬間を捉えてしまったかのような生々しく恐ろしい映像記録で、背筋が凍りつくようだった。

衝撃的といえばもう一つ、大量の客が席を立ったというヤク抜き激太りボロボロ声のライブ映像がもはや別人過ぎて目と耳を疑う。背に腹代えられぬ状況とはいえステージに立ちあんな状態を晒さねばならない本人も相当辛かったに違いない。それでもなんとか立ち直って生きていくために必死だったんだろうと思うと、元気な頃の歌声と同じぐらい、いやそれ以上に痛烈に胸に響いたのだった。
しかしなんぼなんでも、声まであんなに変わっちゃうもんかねぇ...。

そもそも、ホイットニーほどの世界的スーパースターがあんなズンドコなファミリービジネスのマネジメントで回っていたというのも驚き。
あそこまでの規模にもなるとやっぱりファミリービジネスは難しい。
うまくいってるときはいいけど、実の親とかと「金の切れ目が縁の切れ目」になるのは人生に相当暗い影を落とすよね。

つらく重苦しい結末のあとに、初々しいあの日の歌声をもう一度聴かせてくるのは中々ずるい演出。

なお、映画を観終えても俺のなかのホイットニーはPOPフォルダの人のままではあるけれども、ホイットニーのママは完全にソウルフルでした。