ベルサイユ製麺

告白小説、その結末のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

告白小説、その結末(2017年製作の映画)
3.5
ロマン・ポランスキーと言えば、パルムドール、金熊賞、その他数々の輝かしい受賞歴を持つ一方で、最もJOJOに出てきそうな名前の監督の1人として知られていますね? ね?
個人的にはちょっと久しぶりのポランスキーなのですが、前作『毛皮のヴィーナス』がなかなか観念的でまあまあ難解だったので、今作も観る前からちょっと腰が引けてしまってました…。


主人公デルフィーヌは小説家。かつて執筆した私小説的作品が大ベストセラーになり、いまだにサイン会には多くのファンが押し寄せるが、目下大スランプ中の彼女にとってファンの賞賛の声、喜びの表情はストレスでしか無い。
サイン会後、出版社のパーティーで出会った女性エル。デルフィーヌよりは干支一回りほど若いだろうか。ハッキリとした美しい顔だちで、頭の回転が速く気風もよい。何より彼女も作家なのだと言う。様々な著名人たちのゴーストライター!
テレビの有名司会者である夫とも距離を置き、仕事上の付き合いの人間しか身近に居ないデルフィーヌは、突如現れたエルに魅せられ、急速に親しくなっていく…。


…割と普通のサスペンスに思えますね。
親密になるにつれてエルのヤバイ人ぶりが少しずつ露わになっていきます。デルフィーヌが信用して見せてくれた新作の草稿をボロボロにこき下ろしたり、PCのパスワードを聞き出して勝手にカリビアンコ…もとい、メールの整理しだしたり、挙句は部屋に転がり混んで来て…。時を同じくしてデルフィーヌに差出人不明の怪文書が届いたり、ネタ帳が無くなったり…。傍目にはエル様怪しさ大爆発なのですが、これが洗脳の手口というものか、デルフィーヌはどんどんエルの事を慕うようになっていきます。うむ、エルはきっと“ウシジマくん”読んでるな。
不慮(?)の事故で足を骨折したデルフィーヌは、エルの提案で田舎の一軒家で暮らし始めます…。という感じで、よくある“作家監禁物”的な展開になっていきます。うむ、エルは多分“ブラックジャック誕生秘話”読んでるな。これは少年チャンピオン編集部の遣り口!手塚先生逃げてー!壁さんが追ってくるよー!!
まあ、ありがちと言えばそうなのですが、今作のちょっと特異な点はエルの“ゴーストライター”という職業です。エルの本当の狙いとは何なのか?
ポランスキー過去作に、そのものズバリ“ゴーストライター”という傑作が有りますが、彼の頭を支配し続ける、この交換可能性への恐怖の根源は一体なんなのでしょうね?彼ほど数奇な人生を送っていても自我は揺らいでしまうものなのか?或いは余りにも素性が広く知れ渡っている事によって自己が共有され、本来の自我が認識不能になるのか?(※この文章は適当に書いたため、その内容の信頼性、というかそもそもの文意について検証が求められています)

終盤に向けちょっとしたツイストが有るものの、個人的にはまあまあの佳作という印象は変わりませんでした。でも全然有りです。“ロブスターがバーン!”のシーンは笑っちゃったな。


ところで、我ながら何故ウディ・アレンには強い嫌悪感を持っているのにポランスキーは許せてしまうのかよく分かりません。壮絶すぎる生い立ちよる人格形成への影響を考慮してる?…いつも考えてしまうのですが、彼の人生以上に波乱に富んだ物語って創作する事出来るのかしら⁇
あと、他にもJOJOに出そうな名前の監督が居たら教えて下さい。ジム・ジャームッシュはいい線いってると思う。