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影踏みのsomaddesignのレビュー・感想・評価

影踏み(2019年製作の映画)
3.0
タイトルの意味が分かったのは、見終わってしばらく経ってから

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住人が寝静まった深夜の民家に侵入して盗みを働く、通称「ノビ師」と呼ばれる泥棒の真壁修一は、忍び込みの技術の巧みさから、警察から「ノビカベ」とあだ名されるほどの凄腕ノビ師だった。そんな真壁は、ある日の深夜、県議会議員の自宅に忍び込むが、そこで偶然、未遂となる放火殺人現場を目撃。これをきっかけに、真壁がずっと心の底に押し込めていた20年前の事件の記憶が呼び覚まされ……。

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「クライマーズ・ハイ」「半落ち」「64ロクヨン」で知られる横山秀夫原作のミステリー小説を、「月とキャベツ」「昭和歌謡大全」の篠原哲雄監督が実写映画化。

原作未読。
今作の宣伝文句にもあったけど、映画宣伝でよく使われる「実写化不可能と言われた」って、どこの誰が言ってたのか。ホントに言う人見たことない説。そして頼んでない実写化でファン激怒・興行成績も奮わずって何百回もあったことなのに、ナゼ人は同じ過ちを繰り返してしまうのか。


弟・啓二がちがう位相の存在であることが早々に匂わされるので、中盤の終わりで真相が明かされても驚きがなかった。たぶん肝はそこじゃなくて、双子に象徴される合わせ鏡のような存在が、それぞれ対照的な結末を迎えるサスペンスかと。
(図書館で驚く女性が「月とキャベツ」のヒロイン:ヒバナ!)

山崎まさよしと尾野真千子がどう見ても同世代に見えない問題。
どう見ても10歳は歳が離れてそう。消せない過去のせいで急激に老け込んだってことなんだろうか?

あまり俳優のイメージが湧かない山崎まさよしだけど、調べてら映画やTVドラマに出演されていて意外でした。
今作でいえば、寄る辺なく絶望した佇まいで、いつまでも自分で自分を許せない自虐的な姿が素敵。ただし黙っていれば。
セリフがセリフにしか聞こえないっていうか、次に自分が何を言うか知ってる人に見えてしまってちょっと萎えました。

クライムサスペンスであり兄弟バディムービーでちょっとノワール、いつまでも自分を許せないヒューマンドラマかつ、待たせる男と待ち続ける女の恋愛ドラマ……。要素盛り沢山すぎて全体に散漫な印象もあるし、鬱々とした男を健気に待ち続ける若く美しい女って、オッサンの妄想を具現化してるみたいで若干キモい。

二組の双子と二人の女を並列に並べることで、対照的な結末を迎える構成が面白かった。原作であれば叙述トリックになり得ても、映画だと設定の後出しジャンケン感がスゴイ。

真相がすごい唐突に感じて、真犯人につながる伏線を見落としてしまったのかもしれない。唐突すぎて「は?そんな重要なキャラだっけ?😳」とツッコむやら、興ざめするやら。
「意図せずともファムファタールになってしまう女」を象徴的に、主人公含めて「そうとしか生きられない者の苦しみ」を描こうとしてるのかしら? そういや、要領よく世間を渡る人があんまり出てこない映画だったな。要領いい奴はだいたい悪党だし。

エピローグで明かされるある真相が、それまでイマジナリーオトウトだと思ってた存在から語られれてしまうので驚いた。主人公には知りえない話を語るので、成長した主人公が過去を乗り越える解釈に変化したって見方もできるけど、急にスピリチュアルで霊的なアッチ系の話ぽくなって引いた。「お前それ早く言え!」ってのもある。何年鬱々としたと思ってんだ。


117本目
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