銀色のファクシミリ

影踏みの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

影踏み(2019年製作の映画)
3.3
『#影踏み』(2019/日)
劇場にて。原作未読。様々に示される情報の断片が、淡々と進む物語の中で形になっていくのだけど、主人公が泥棒ゆえに事件捜査モノの予定調和がなく、展開も結末もかなり意外な作品でした。クライム・ミステリーというよりは、正統派ハードボイルドとしての良作。

あらすじ。通称「ノビ師」は家人が寝静まった深夜に侵入する泥棒。凄腕で知られるノビ師・真壁(山崎まさよし)は、ある夜に侵入した家での放火殺人を止め、それを端緒に逮捕された。2年後に出所するが「放火殺人未遂」の事実は隠匿されていることを知る。真壁は弟分の啓二(北村匠海)と真相を追う。

作中でも云われるですが「自分の逮捕につながったとはいえ、放火殺人未遂事件をお前が調べてどうする?」という疑問は拭えず、序盤のフックとしてはかなり弱め。しかし話が進むにつれ「真壁はなぜこの事件にこれほど執着するのか?」という謎に変化して、ついに物語の中心に躍り出てくる。

凄腕のノビ師が誕生するまでの真壁の人生、幼馴染み・久子(尾野真千子)の人生。そして放火未遂事件から派生した大きな出来事。そして題名「影踏み」も絡み合って幾つもの真実が明かされ、こう落着するのかと驚く。実はかなりのネタバレ厳禁映画なので、多くは書けないのです。感想オシマイ。

追記。キャストで特筆すべきは、幼馴染役の尾野真千子。篠原哲雄監督作品では『起終点駅』にも出演されていますが、自らの意志で運命を受け入れるように選択する、という役は抜群。『影踏み』でも『起終点駅』でも、出番以上の存在感で作品全体を包んで物語に一本の芯を通す俳優さん。

もう少し追記。オール群馬ロケだけあって知ってる場所多し。特に七興山ドライブインはレトロドライブインマニアには有名な場所。名前の由来の七興山古墳は、東日本最大の前方後円墳だったりと、情報量過多なスポット。あと奇しくも「いつでも捜しているよ どっかに君の姿を」な映画なのを気がついた。
(2019年11月10日感想)