鈴峯らんか

多十郎殉愛記の鈴峯らんかのレビュー・感想・評価

多十郎殉愛記(2019年製作の映画)
4.0
わたし、ギリ昭和生まれ。なので中島貞夫監督作品を映画館で見ることが生まれて初めて!
時代劇映画黄金期を知識としてしか知らず、時代劇専門チャンネルやDVDで見ることはあっても「黄金期を支えた監督の作品を映画館で見る」というのが初めての体験。興奮せずにはいられなかったー!

中島貞夫監督は女の人を撮るのが上手なのかなってのが見る前のぼんやりしたイメージだったけど、予告編で見た主演の高良健吾さんの表情を見てすっかり認識が変わった。何この目!今この年齢でこんな目付きできる役者いるの!?って。時代劇やるには体が細すぎるんじゃ?って思ったけどそれが退廃的な色気を出す道具になってた。なんでか市川雷蔵さまの眠狂四郎を思い出したな。そのくらいの退廃的な存在感。そんなキャラをこの時代に作れる監督っているんだ…っていう驚き。
それに画面の色が渋くてかっこよすぎる。本編見えない人は予告編だけでも見て欲しい。あんな色使い、今他にできる人いるのかな?

CGを使わない人間同士の呼吸だけで作る殺陣ってほんとにすごいもの。初めて映画館であんなに長いチャンバラを見たけど迫力がテレビとは全然ちがう!一対多数、一対少数、一対一といろんなパターンの殺陣シーンが見えるのも大満足!東映剣会メンバーの見せ所が多いのも時代劇ファンのわたしは嬉しかったな。

わたしが好きなのはお金が入った多十郎がドンチャカ騒ぎするシーン。「大奥㊙物語」にもすっぽんぽん騎馬戦するシーンあったけど、ああいうバカ騒ぎって実際の江戸時代のノリがわからないから想像するしかないと思うんだけど、たぶんこの時代の人もいろんな不安から一晩だけでも騒いで逃げたかったのかな〜って思うくらい楽しそうだった!筆を加えてる多十郎の表情がものすごくえろかった…。

もちろんラブストーリーとして見ても面白い映画。多十郎に「なんでこんな俺なんかかまうんだ」って聞かれたおとよの「こんな女だからよ」って言葉、全ての男女に当てはまると思う。わたしもいつか言って自分を納得させたい。
結局いろんなものから逃げてる多十郎がツケを払わされる話なのかなって。多十郎は弱いから逃げるし、ほんとにおとよを愛したのかもわからない。自分より生き抜く力があるおとよに自分の出来なかったことを託すしかない、ああなるしかない、ああ生きる以外ないのかもしれないけど、それがピュアなとこなのかも。小狡いことや簡単に嘘をつけないところが多十郎の魅力なのかな。だからどこまでも綺麗な目をしてたのかな。
平成最後にすごい映画を見せてくれたことに感謝しよ。ハッピーエンドではなくても、心にたくさんのものが残るいい映画だった!