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チワワちゃんのマーチのレビュー・感想・評価

チワワちゃん(2018年製作の映画)
2.7
【レビュー🐩】

《チワワにまつわるエトセトラ》

全陽キャ及びパリピ必見の作品。

正直、陽キャとは相容れずに映画ばかり観てる私にはあまり響かない内容だったのだけれど(笑)、終盤の成田凌のように否応無く社会の秩序に飲み込まれていった“元陽キャ”は、この映画を観ることで自分がパリピってた社会人過渡期のことを懐古して泣くのではないかと思う。

音楽に合わせてカットを繋ぐ、PVみたいな映画だなと思っていたら本当に映画の途中でPVが始まるもんだから驚いた。そういうのって意外とよくあるし、ストーリーも桐島が出てくる『桐島、部活やめるってよ』を拗らせに拗らせて薄っぺらく伸ばした感じで、悪い意味で色々と普通だった。あそこまで奇抜な照明や演出をしているのに“普通”なのは寧ろ問題。

そもそも自分が好きな役者が勢揃いしていたので観に行ったのですが、門脇麦さんの演技は文句無しに素晴らしかったし、玉城ティナさんは文句無しに可愛かったし、村上虹郎くんはずっと被ってる帽子のせいかチワワちゃんよりも子犬っぽくて愛らしかった。浅野忠信さんが登場した瞬間、映画自体がキュッと締まるし、キャスティングそのものは何も悪くなかった思うけど、個人的に大好きな松本穂香さんが最後におまけ程度に出てきたのはよく分からなかった。チワワちゃんへの新証言が呼び起こすカタルシスを狙ったのだとしたら、あまりにも浮いていて余分にしか感じられなかった。

観ている間はまあまあ楽しめたつもりだったんだけど、終わって数十分経てば内容の薄さが目立ってくるし、青春ドラマとしても群像劇としても何かちょっと物足りないという印象を受ける。それと全裸(?)で浅野忠信さんとチワワちゃんが向き合って愛の山びこをするくだりは本当に何がしたいか分からなかった…作品から分離した謎のシーンだったし、意図も汲み取れない。というか、原作読んでいないから原作リスペクトのシーンならしょうがないのかもしれないとは思うけど、なんてことなくカット出来たシーンだと思うし、別に流れ上必要無かったのでは?とすら思える。

特に目くじら立てて怒るほど酷い作品という訳ではないのだけれど、色んな意味で邦画若手監督にありがちな普通の作品すぎて、普通よりも劣っていた。

【p.s.🐕】
数作観た上で個人的に二宮監督とは合わないことが分かったので、今後よっぽどのことがない限り彼の作品で劇場に足を運ぶことはないと思います。オープニングクレジットでかっこよく自分の名前を出す、“俺の映画がはじまるぜ!”感は一周回った清々しさすらあって好きだったですが、肝心な作品の中身がスカスカだったなという残念な印象でした。でもパリピ故に希薄なお互いの関係性みたいなものは全体的に巧妙な描き方が成されていて素晴らしかったです。(内面の描き込みが深くされていないことは作品のコンセプトを満たしているという意味では長所なのだけれど、映画的興奮やカタルシス、感情移入は自動的に排除することになってしまう訳で、観客の受ける印象としてはどうしても薄く表面的なものになってしまう。そう考えると短所でもあるし、どちらかといえば短所の方が勝ってしまっている。)

あと、最初のアバンタイトルまでのくだりのカット割りが細かすぎるのと羅列された激しく動く映像のダブルパンチで久々に映画観てて酔いそうになりました。笑 映画で酔いそうになったのは、『ハードコア』以来です。笑


【映画情報】
上映時間:104分
2019年/日本
原作:岡崎京子『チワワちゃん』
監督・脚本・編集:二宮健
出演:門脇麦
成田凌
寛一郎
玉城ティナ
吉田志織
村上虹郎
上遠野太洸
松本穂香
成河
栗山千明
浅野忠信 他
概要:遺体で発見された女性の遊び仲間た
ちが、今まで知らなかった彼女の素
性に迫るという若者たちが繰り広げ
る青春模様を描いた群像劇。
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