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チワワちゃんのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

チワワちゃん(2018年製作の映画)
4.5
【チワワの痴話話】
『MATSUMOTO TRIBE』や『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』で注目を浴びた新気鋭・二宮健が、門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナと今注目されている役者を集めて岡崎京子の同名漫画に挑んだ意欲作。これが驚かされました。日本にも『スプリング・ブレイカーズ』のようなサイケデリックながらも、若者の孤独を深く深く掘り下げて描ける作家がいた事に。一見すると、中島哲也を思わせる映像ゴリ押し作品なのだが、彼の作品と比べ、しっかりキャラクターや物語と向き合っており、それが映画に奥行きを与えている。

いきなり、とてつもなくクールなオープニングが観客に襲いかかる。サイケデリックな、映像のフラグメントが押並べられて行く。キラキラしているのだが、退廃に溺れていく若者が表現されている。そんな若者の前に、《チワワちゃん》が現れる。人懐っこくって、本当にチワワにしか見えない。そんなチワワを演じた吉田志織は、『心が叫びたがってるんだ。』しか出演していない新人女優だ。そんな彼女を発掘し、冒頭だけで魅力を120%引き出す監督の技巧に魅了される。

そして、金のないパリピ軍団に「あそこに600万円あるぞ!」悪魔の囁きが降りてくるや否や、チワワちゃんはお魚くわえたどら猫のように、建設会社の男が賄賂用に持ってきたその金を強奪して逃走する。そこでタイトルが出てくる。あまりのハイセンスなオープニングに胸ぐらを掴まれました。そして、チワワちゃんがバラバラに切断されたニュースと共に本題となる。

ミスリードする人が多そうなので、先に語っておく必要がある。本作は、ミステリーではありません。チワワちゃんの死の真相を暴くのが重要ではなく、チワワちゃんの死で持って青春の終わりを迎えたパリピの喪失感、虚無な世界を描く事に注力した作品なのだ。だから、劇中意味ありげな事件や闇がチラチラ見え隠れするのだが、結局それがなんなのかわかりません。それを明かす事には意味がなく、そういった事件に無関心になる若者像が重要となっているのだから。

なので、『スプリング・ブレイカーズ』同様、祭の後の苦い蜜を描いた作品なのです。遊び狂った先に見える、悪夢。そして自然にバラバラとなっていく仲間たちを見て感じる侘しさに酔いしれました。

本作は、間違いなく万人受けしないのですが、オススメです。また、本作を気に入ったら、今年日本公開予定の『CLIMAX』を観ることオススメします。
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