乙郎さん

チワワちゃんの乙郎さんのレビュー・感想・評価

チワワちゃん(2018年製作の映画)
3.0
悪くない。むしろ岡崎京子原作映画では初めて「良い」に分類されるものが出てきたとさえ思った。
言いたいことはたくさんある。ナガイのキャラ変とか、オリジナルエピソードの冗長さ(浅野忠信の部分も成田凌の部屋の部分も全カットでいい)とか、長すぎるところとか。ただ、岡崎作品の空虚さを初めて映画で出すことができた、その美点のみで大事にしたい。
岡崎京子の漫画に出てくるクラブでは音はなっていない。作者がイメージする音はあるかもしれないが、具体的な名前は付いていないだろう(つく時はT-Rexとか思いっきり作者の趣味だった)。この映画では冒頭から思いっきりEDMを流す。この時、あ、岡崎作品を映像化する時って、思い切って色を塗っちゃていいんだと思った。おかしな話で、蜷川はおろか、行定でさえ色を塗りすぎと思っていたのに、二宮の塗り方は不思議と嫌じゃなかった。
明確に『スプリング・ブレイカーズ』を模しています。この戦術、僕は吉と出たと感じた。所謂「スタイリッシュ」な映像で演者の肉体を切り刻み、その空虚さを露わにする手法から、どんどん肉体に寄っていくという戦術は、前時代的かもしれないが、テーマも相まって胸を打つ。
正直、欠点は多いのだが見過ごせない作品。2019年は『ホットギミック ガールミーツボーイ』や『ウィーアーリトルゾンビーズ』と並んで本作が公開された年としてら記憶されるべき。
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