八巻綾

パウロ 愛と赦しの物語の八巻綾のレビュー・感想・評価

パウロ 愛と赦しの物語(2018年製作の映画)
3.0
アメリカ製作のキリスト教映画。もう、ゴリッゴリの、ド直球の、一点の曇りもないキリスト教映画。

イエスが復活しキリスト教が生まれた後、各地にキリスト教を宣教して回ったパウロ。新約聖書ではイエスの次に重要といってもいいほどの人物で、いわば、教義としてのキリスト教を成立させた人物だ。そもそもはキリスト教を激しく迫害していたが、回心。その後は各地を渡り歩いて伝道活動を行い、教会を設立していった。

てっきり、パウロの劇的な回心を描いているのかと思いきや、全然違った。皇帝ネロに陥れられ死罪のときを待つパウロと、彼に随行していたルカ(福音書など聖書の著者のひとり)とを描いた映画だった。

残虐な迫害が苛烈を極める中、ローマにいるキリスト教徒たちは怯えながら隠れて過ごしていた。逃亡を主張する者、復讐を願う者、ローマに留まって人々を救う道を望む者など、キリスト教徒たちの意見も割れ始める。誰もが、使徒たちの心の支えであるパウロの考えを知りたがった。それまでパウロに随行し福音を記述したルカは、看守を買収して度々パウロに会いに出かけ、パウロの言葉をできるだけ多く書き記そうと心に決める。監獄長はそんなルカの姿を不審に思うものの、キリスト教徒たちの罪にも確信が持てず……。

パウロとルカとの対話を通じて、パウロが新約聖書の中の書簡として語っているあらゆる内容が提示されていく。イエスの復活に対する信仰が最重要であるとか、有名な「愛の説教」であるとか、クリスチャンであればおなじみの言葉が様々なシーンで力強く語られていく。

もちろん、映画化する際に必要な装飾というか、ドラマチックなエピソードや独自の解釈もあるし、パウロのキャラ設定なども捻られてはいるのだが(けっこう軽口をたたく)、やはり全体的にはどストレートなキリスト教映画だ。ミッション系ならば学校の授業で観るような内容。この映画をミニシアター系とはいえ、普通に映画館で観ているのが不思議なくらいだった。

なんとなく、「対象が限られていそうな映画だからガラガラかな」なんて思いながらシアターに入場したら、かなり人が入っていてビックリ。8割くらい埋まっていたんじゃないかしら?そこで初めて、全国のキリスト教の教会がこの作品を猛プッシュしているのであろうことに気付いた。皆さん、かなり序盤から泣いてたし。どう考えてもクリスチャンばっかりだったと思う。

『パッション』みたいな変化球ではなく、こういったストレートなキリスト教映画がこの規模で作られるということが珍しいのかな。なんだか、クリスチャンの期待や熱を感じる上映時間だった。まあ、私もクリスチャンではあるのだが……教会にほとんど行かないので本作の存在なんて全然知らなかったよ!

ちなみに、聖書の知識がゼロだと、なかなかついていけないタイプの映画ではある。パウロが誰なのかを知らないと冒頭からチンプンカンプンだろうし、イエスの復活についてもある程度意味付けを分かっていないと厳しいかも。そういった意味でも、直球のキリスト教映画。もしご興味ある方はぜひ。