TAK44マグナム

タイタンのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

タイタン(2018年製作の映画)
2.8
改造されて宇宙へ行こう!


2048年、人口増加や環境破壊によって余命いくばくもない人類。
残る策は土星の衛星タイタンへの移住。しかし、タイタンは人間が普通に生活するにはあまりにも過酷な環境の星であった。
そこで、いまから惑星改造を行うよりも、人類を環境に適するように改造する「強制進化計画」が立案され、世界中から生存能力の高い者が集められた。
それぞれの家族も見守る中、未知の領域へと踏み込む人体改造が始まるのだが・・・


「アバター」のサム・ワーシントンが、人類の未来のために「新たなる種」へと改造されるSFスリラー。
「テラフォーマーズ」や「仮面ライダースーパー1」みたいなものですね。
あれをリアルにやったら、きっとこんな事になっちゃうからよく考えなさいよ、と戒める話ともとれるでしょう。

人類の未来のために人はハエトリ草にならなければならないと考えたキチガイ博士が出てくる「悪魔の植物人間」や、人類の未来のために人はヘビにならなければならないと考えたキチガイ博士が出てくる「怪奇!吸血人間スネーク」など、70〜80年代に、やたらと狂った科学が改造人間を作りだしてしまうショッカーみたいな映画が作られましたが、本作はその後継者みたいなものですね。
違うのは、本当に人類絶滅が近いからというエクスキューズがあるので、完全に頭のおかしい研究にも関わらず、国際的規模の予算が与えられた正当な計画であるという事でして、おおっぴらに改造人間を作れるわけ!
計画を推し進める博士が、自らの理論の実証のためには他人の犠牲も厭わないマッドサイエンティストなのに、表立っては誰も止めようとしないってのがそもそも狂ってます。

そのくせ、そこまで人類が焦っているようには見えないんですよね。冒頭のニュース映像で「ロサンゼルスは居住不可能になった」とか語られるのみで、舞台となる島はまだまだ自然もいっぱいで夜空も綺麗なものだから、環境破壊とか言われてもピンときません。
すごく悠長な計画に見えてしまいます。
もう少し、切羽詰まっていてもよくない?

また、土星まで有人飛行できるぐらいには発達していても、いまから30年後のわりにはそこまで文明は発達していなさそうで、そこはリアルかもしれませんが、もう少し近未来感があっても良かったような気はしますね。
終始暗くて重苦しい雰囲気で、ワクワクするようなSF的未来感は殆どありません。


シリア砂漠を水も無い状況で三日間生き抜いたリック(サム・ワーシントン)は、その生存能力を買われてNASAが推進するタイタン計画へと参加します。
同じく集められた仲間たち(「ワイルドスピードシリーズ」のナタリー・エマニュエルも!)と共に、酸素濃度が薄く、メタンの海が広がるタイタンでの生存に適するよう、薬物投与や遺伝子改良、そして苛烈を極める訓練によって徐々に「人ではない何か」へと変えられてゆきます。
ある者は突然死し、ある者は凶暴化と、次々と仲間が脱落してゆく中、リックは適応者として実験をクリアしてゆきますが、それは愛する妻や息子との別離を意味していたのでした。


終盤、ついにタイタン星人(苦笑)となったリックの制御がきかなくなる定番の展開になるわけですが、そこからのラストは変に捻りを加えてしまって、結果的に平凡な着地になってしまった感が否めません。
正直、「うん、それで?どうするの?」と、ポカーンと置いてけぼりにされるラストでしたよ。
「人類の希望」とか言われても、そもそも既に人間とは言えないのではないでしょうかね。
家族もあれで良かったの?
空を見上げて笑顔になっていたけれども、何一つ解決しちゃいないような気がするし、こんなんだったら人類最期の瞬間まで家族みんなで一緒に抱き合っていたほうがマシじゃないのかなぁ?
そんな気がしますけれど。

なんというか、計画に志願しているからかなのか、改造される悲哀が感じられず。
途中から奥さん目線で進むので、リックの心境とかが伝わりにくかったです。
奥さんも奥さんで、あそこまでいったら旦那を説得しなさいよ。
愛する旦那さんがモンスターにされそうなんだよ?
色々と動きはするけれど、結局は博士に言いくるめられてアホかと思ってしまいました。

タイタン星人になった父親をみたら、自分だったら発狂しかねませんが、息子くんが意外と冷静なのもどうなのか。
愛するがゆえなのかな。

「シェイプ・オブ・ウォーター」を意識しながら観ると、ボヤけていたテーマに少しは輪郭が見えてくるような、こないような(汗)

そこまでお金をかけた風には見えないので、大作というよりSFアンソロジードラマ「アウターリミッツ」の一編みたいな感じです。
いまなら「ブラックミラー 」で取り上げられてもおかしくない内容。
かといってビジュアル関連などショボくは無いし、テンポは良くないものの改造途中はそれなりに面白かったのに、やはりオチが消化不良を起こしていて残念でした。
もっと、往年の改造人間モノのようなハッタリ感も必要だったのではないでしょうかね。
ちょっと真面目すぎました。


NETFLIXにて