しちれゆ

止められるか、俺たちをのしちれゆのレビュー・感想・評価

止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)
3.7
若松組の中で男たちに排除されることなく仲間として認知され居場所を与えられた筈だっためぐみ。でも彼女には思想も信念も才能もなくて、なにより″女″だった。1969年、完全な男社会にあって何かをぶち壊したいなどという思いは彼女にはなかっただろう。あとから来た男たちがどんどん自分を追い越していく中で彼らの唐突な政治熱にも乗れず疎外感が募っていく様子がリアルに描かれていく。

映画を作ることが生きることそのもの、という若松孝二には女は被写体ではあっても同志では有り得なかったのは仕方ない。

何者かになろう、という気持ちは時に人を破滅させる。めぐみがふつうの幸せを求め普通の生き方を選んでいたら妊娠も出産も祝福されていたであろう、昭和のこの時代にあっては。それはめぐみがめぐみたることとは相反するけれども、同じ女としてはそう思わずにはいられない。

ATGの役職者として奥田瑛二が出ていたのは感慨深い。往年の映画ファンならわかるよね!
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