ノラネコの呑んで観るシネマ

人間の時間のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

人間の時間(2018年製作の映画)
3.7
古い軍艦を使ったクルージングに乗り合わせた人々。
日本人の新婚カップル、政治家親子、ヤクザ者の一団、詐欺師に不良少年のグループに娼婦たち。
そして艦内で砂を集める謎の老人。
イザコザで最初の血が流された翌朝、彼らを乗せた軍艦は、いつの間にか虚空を漂っている。
食糧は底をつき、欲望に突き動かされた人間たちは、やがて殺し合いを始めるのだが、ただ一人老人だけは集めた砂を使って植物を育てる。
過去にもキリスト教をモチーフとした作品を撮って来たギドクらしく、暴力を象徴する軍艦はノアの方舟であり、エデンの園となる運命。
しかしその楽園は、欲望を燃料に悪意のある神によって作られたものである皮肉。
そこに生きるアダムとイヴは、無原罪どころか罪の子である。
だが一連のギドクのセクハラ騒動の顛末を知っちゃうと、一番罪深いのはスクリーンの裏にいるアンタじゃないの?と思っちゃうのも確か。
キリスト教をモチーフとしながら、死体から豊穣が生まれるハイヌヴェレ神話を取り込んで、罪深き命の循環の物語としているのが面白い。
日本語と韓国語がチャポンで使われ、通じちゃうのも超常の世界の話だからか。
とても分かりやすい作りだからある程度狙いなんだろうが、キャラクターが類型的で結論が序盤で見えちゃうのがなあ。