もう衝撃でしかない。この監督の作品にはいつも驚かされるが、これは特別。でも、これまででいちばん面白いかもしれない。『パラサイト 半地下の家族』の語る哲学が凡庸にも見える。
艦船による1週間の船上旅行。船には政治家とヤクザが乗りこみ、優遇を受ける。それを問いただす男女のカップル。ヤクザは女を犯し、男を殺す。船上が権力と暴力に支配されたとき、艦船は空に浮かぶ…
生死の境に立たされたとき、人間の理性は簡単に吹きとぶ。欲望がむき出しになり、暴力がはびこり、正義なんてものは意味を失う。それをこの映画は、「神」の視点から見つめる。
だからここでは、喜びも楽しみも、怒りも哀しみも関係なく、人の命をつなぐことだけが求められる。ときに人を肥やしにしながらも。精子は「ただのタネ」で、人が「生きるのに理由はない」。
描かれるのは虚構の世界。ただこの世界、すぐそばにあるんじゃないかとも思える。キム・ギドクはよくこの着想にいたったなと。常人には思い浮かばない。でもなぜだか惹かれる。哲学的、そして芸術的。
で、オダギリジョーも出演。これまた衝撃的な役まわりで 笑