のん

騙し絵の牙ののんのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.3
原作の破壊と再構築による野心的傑作


「主演・大泉洋」であてがきされた小説を、吉田大八監督はあえてそのままの映像化せず、映画化にあたりほとんど原作の破壊と呼べるレベルで個々の要素を分解したうえで再構築を試みている。


それはもう換骨奪胎のような生ぬるいものでないのだが、不思議なことに原作に対するリスペクトから生まれているのだとも感じる。


テンポの良い編集と音楽は出版社を巡る人たちの野心剥き出しのバトルをさながらポリティカルサスペンスのように見せており、吉田大八監督の緩急のつけ方は見事だと思う。



「最もらしくない」と自らが語る大泉洋の役は、しかし、本来はこの作品での演技が出来るポテンシャルがある役者なので、「新解釈・三國志」がいかに大泉洋を表面的なイメージでしか扱っていないのかがよくわかる。



登場人物の半分以上が、原作に登場しないキャラで「お前誰やねん」状態が原作を読んだ人はなるだろうが、原作、映画、どちらから見ても楽しめる稀有な作品だと思う。
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