メザシのユージ

騙し絵の牙のメザシのユージのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.0
2021・46
大手出版社の薫風社で創業一族の社長が急死し、次期社長の座を巡って権力争いが勃発する。専務の東松(佐藤浩市)が断行する改革で雑誌が次々と廃刊の危機に陥り、変わり者の速水(大泉洋)が編集長を務めるお荷物雑誌「トリニティ」も例外ではなかった。くせ者ぞろいの上層部、作家、同僚たちの思惑が交錯する中、速水は新人編集者の高野(松岡茉優)を巻き込んで雑誌を存続させるための策を仕掛ける。
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出版業界を舞台にした物語。出版業界で面白い小説を書く作家は、金の卵を産むガチョウか。そのガチョウを取り合うパワーゲーム&権力争い。暴力ではなく策略や知力や意地で大勢が戦う。二転三転する物語が純粋に楽しい。

大泉洋が演じる速水のキャラクターが面白い。速水は一言で言えば、誰のことも信用しない人たらし。面白い事をやりたいが、それは誰かのためではない。問題は単に自分が面白いか面白くないか。編集者としてのポリシーも特にはなく、おそらく自分が一番活躍できる場所が、たまたま本や雑誌の出版業界だったのだろう。彼が言う「面白いことには、寿命がある」はエンターテイメント業界で働く人にしたら嫌な言葉だと思う。

一応、主人公は大泉洋の速水かもしれないが、彼の部下になる高野役の松岡茉優が出番が多くもう一人の主人公だと言えると思う。彼女の「誰だよ?」って台詞一発で笑いをとれるセンスは凄いと思う、勘の良さというか。

「美しい星」「羊の木」と面白いけど変な映画が続いた吉田大八だが今回は素直に面白い映画だった。