キツネとタユタム

騙し絵の牙のキツネとタユタムのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.1
不況な大手出版社に新任で就任した編集者が、社内のいざこざも巻き込みながら生き残りをかけ奇策を展開していくお話。

とても面白い作品だった。出版業界の厳しさと、生き残るために色んな策を打っていく流れは、わくわくするものであった。そのために旧世代の考え方をする人や、柔軟性を無くした人たちを騙す形で話を進めていき、淘汰する。そして新しい考えについていけるものだけが成功できるのだと描く様は考えさせられる部分が多い。

それにしても良い作品だったからこそ、予告編での広告の仕方やうたい文句が気になった。
「騙された率97%」とか「騙された回数平均9.4回」とか。何かそんなどこから現れたか分からない安直な数値で興味を引かせようとしているのが残念な気持ちになる。
そんなこと言わなくても面白い要素を多分に含んでいるのに、そのうたい文句のせいで、どこで大逆転が起こるのか。どんでん返しが起こるのか。ばかり気になってしまい、純粋に楽しめなかった部分があったと思う。そうしないとそもそも観てもらえないのかもしれないけど、本編の観方が変わるほどの宣伝のやりすぎは考えものだなと思った。

主演の大泉洋はさすがの面白さ。ひょうきんな雰囲気を出しながらもどこまで計算して行動しているのか分からないキャラ作りは観ていて面白い。キザなセリフはあまり似合わないので言わせないで欲しいところはあるけど。
その他、有名な俳優さん、女優さんが脇を固めているので見ごたえは抜群。
こんなところにこんな人が…!という驚きで観るのも楽しいと思う。

二転三転するストーリーは中だるみもせずにどんどん畳み込んでくる勢いもあるので、充実した時間を過ごせると思う。とても密に考えこまれた素晴らしい作品。
どんでん返しを気にしすぎるとラストで、これで終わり?と思う部分もあるので観るときは純水な気持ちで観るのが一番。
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