「チコと鮫」
未だかつてこの監督フォルコ・クイリチの作品を観た事が無くて去年DVD化された「チコと鮫」も気になっていたから同時に「遥かなる青い海」と購入した。気になるのは脚本のアルロリオだ。ケマダの戦いやゾロの脚本家として有名で音楽はモリコーネときた。一体どんな作風なのか楽しみだ…今から初見する
冒頭、南海の楽園タヒチ。
慌しい海と男等。壮大な音楽、常夏の島、漁師、入江。1人称で語られる物語、原風景、そして1匹の鮫。
今、少年は様々な思いと共に帆いっぱいに旅立つ…
本作はフォルコ・クィリチ監督による美しい島タヒチで暮らす少年が青年まで成長する過程を近代化の波に押し寄せられ、
大海原へ旅立つ迄を鮫との友情を描いた62年伊、仏合作映画の傑作だ。
この度、初見したがこんな晴好雨奇で晴光、勝絶な心まで清らかになる映画は珍しく、本当に素晴らしい。
終始流れるノスタルジックな音楽と雰囲気、蒼穹と小魚、海中の描写、男の子と女の子の青春、村の人々達の笑声、何よりストーリーに感動する傑作だ。
いや〜こんな最高な映画があるとは…知らなかった。風光明美、式たり、島の圧倒的な新緑と活力…正に神秘的光景に目を奪われる。
これほどまでに文明批判をした美しい作品は初めてだ。
物語はタヒチ島に住む少年は老人に昔話を聞かされた。彼はまだ海に入れない…珊瑚礁に小屋を作り、自給自足する生活。ある日、小鮫を浅瀬で発見。
そこから少年との絆が芽生える。物語は第2部へ。少年は立派な青年になる。島は近代化していき、彼にとっては住み辛くなる…
小さい頃に好きだった女の子が米国から休暇で戻りまた一緒に日々を過ごす…と簡単に話すとこんな感じだが、
昔に観た遠雷と言う邦画を思い出す。
都市化の波を田舎町の農園青年が葛藤する話だが、本作も原始的な物は破壊され、全て近代化してく行く模様が映る…
本作の凄みはドキュメント風に展開されつつ、どこか民話的で南太平洋に浮かぶ島々の風景を人間による俗化で破壊され、なす術なく変貌して行く故郷への哀惜が画面から溢れ出す演出、特にF.D.マージによる音楽が慟哭を誘う…。
役者は皆、現地民で素人ながらに完璧な芝居をみせた。
鮫と人間は敵同士と言うのが世の常、海を支配する王者、本来なら非現実的な友情なのかも知れない…が嘘偽り無く観れる本作には製作側の優しさを感じる。
この監督の映画はこれが初めてだが、他にも最後の楽園、青い大陸、南十字星の下などもぜひ観たい。
こんな優れたドラマ性を生み出す彼の力量に拍手喝采。本作を観てポリネシア諸島に行きたくなったよ。
既にハワイは文明が支配してるが、赤道から南に下った海にはまだ文明にとり残された楽園があるかも知れない…。
兎に角、ラストに感動する。
涙を流さずにはいられない。1人で唯一抵抗してきた主人公チコが選んだ道…それは愛する女性ディアーナと友達の鮫マニドゥーと……。
ネタバレになる為、あやふやにするが、未見の方は是非、是非観て欲しい。
これを機にブルドーザーやトラクターを目にすると嫌な気持ちになるかも…笑。
自然を破壊する文明の公害に悩まされる人々の気持ちが映画を通して伝わった。
本作はフランス帰属だったらしく、通りでフランス人っぽい人がいるなと…あと中国人に似た顔つきの人々がいるなと思ったら混血が締めているらしい…調べたら。
画家のゴーギャンが辿り着いたタヒチは魅了される島だ。傑作だ。