ラッキーマウンテン

若おかみは小学生!のラッキーマウンテンのレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.3
最初は全く興味がなかったけど、友人が面白そうと言っており、またここやSNSでの評判が良いので観に行った。
今年度の邦画で3本の指には入るし、国産アニメ映画でも10本の指に入りかねない傑作だった。
少なくとも泣いてた時間は今年一番である。
表向きは子供向けだけど、大人の鑑賞に耐え得る、むしろ大人にこそ響く素晴らしい仕上がり。

両親を亡くした小学6年生の女の子が旅館で若おかみ修業という設定、個人的には突飛で荒唐無稽で安直な少女漫画みたいだなぁと思っていた。
すみません、私が間違っておりました。深謝します。
宿の掲げる信念、短い中でもしっかりキャラ立ちした登場人物、おっこの心理描写と演技を通して、旅館というのがこれ以上ないベストな設定なんだと思わされる。
まぁベストだからこそ原作がベストセラーになってるんでしょうけど。Q.E.D.!

とにかく物語構成作画音楽脚本演出、どれを取っても素晴らしい出来なんだけど、時折挟まれるとある演出は秀逸。今も思い出して泣いてる。
中盤から終盤にかけての叩き込むような展開を唐突に見せないため、おっこの性格と人間関係は特に丁寧に描かれている。
が、ウリ坊と美陽周りについては若干説明不足かも。なぜおっこがそうなってしまったか、なぜ鈴鬼が把握しているのか。
前者は大人なら想像できるけど、子供はピンと来ないかもしれないし、後者は正直私もわからない。
まぁそういうとこは親が子供に助言したり一緒に考えたりすべき部分でもあるので、あえて説明を省いているのかもしれないけど。
ラストシーンはもし川村○気がプロデューサーだったら十中八九変わってただろうな。個人的には好きな終わり方だけど、大衆娯楽用のラストではなかった気がする。

作画について、神楽のシーンで重心を感じさせるのはすごい!とSNSで言ってる人がいて、そういやそんなこと易々とできないよなと改めて感じた。
しかし作画はずっとすごいせいで感覚が麻痺してくるのだ。キャラの力点や重心が見えてくるのは当然のように思ってしまう。
キャラデザはどう見ても小学生向けなのに、表情の豊かさや美醜の描き分け(別に醜い人いないけど)が素晴らしい。これはやはりジブリ発の実力?

ウリ坊の敬礼みたいに凝りまくった設定がまだいっぱいありそうで、やはり子供向け・ファミリー向けで終わらせるには勿体なさすぎる一品。
そして仕事を頑張ろうと思わされてしまうので、ある意味立派な社畜養成映画でもある。
文科省だけじゃなく厚労相から推薦されてもおかしくないのでは…あ、コンプライアンス的にアウトか。おわり