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若おかみは小学生!の小のレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.5
原作が同名の児童文学書ということもあり、スルーしようかと思ったけれどフィルマークスの点数は高いし、ネットの短評とかもなかなかの高評価だったので鑑賞。

ハマった。素晴らしいストーリーで、中途半端な物分かりの良さがないのも好感触。加えて、人生のホントウをストンと落とし込んだ、小学女子の主人公「おっこ」のクライマックスでのひと言に恐れ入った。

とある事情から旅館を継ぐため若おかみとなった「おっこ」。彼女を支えてくれるちょっと変わった仲間や、憎たらしいけれど優秀で学ぶべきことの多いライバルの力を借りつつ、ワケありでクセのある宿泊客への心のこもったおもてなしを通じて成長していく。

おっこは人生の目的をはっきりとつかんだように思えるけれど、人生の目的とは何か。本作を観る前日、たまたま読んだ新渡戸稲造先生の言葉によれば次のようだ。

<この世に生まれたいちばんの目的は人に尽くすことである。自分のために名誉や利益をえることではない。生まれてから死ぬまでの間に、自分の周囲の人がほんの少しでもよくなれば、それだけで生まれてきたかいがあるというものだ。>(『武士道的 一日一言』)

要するに「利他」ということなのだけれど、まさにこのことが本作の核心、世界観だと思う。分け隔てすることなく、どんな人にでも喜んでもらうことを第一に考えて行動し、その喜びを生きがいとする。

もちろんホントウは人によって違いがあるし、「利他」なんてきれいごとに思えるかもしれない。しかし本作においては「利他」の精神によって、とても重たい葛藤に折り合いをつけていくことに心を奪われた。

つまり「利他」の精神は他者に喜んでもらうという「美しさ」だけでなく、自分が過酷な人生を生きていくうえでの「強さ」も併せ持っていることを教えられた。

これを小学生にもわかるよう描き切るとは、なんと素晴らしいことか。劇場には子どもが多かったけれど、観て満足できる大人も多そうな映画だった。

●物語(50%×5.0):2.50
・かなり好き。教えられた。「若おかみ」シリーズ、全部読みたいかも。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・違和感なし。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・やっぱり良い。
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