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若おかみは小学生!のDTAKのレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.0
【凄まじい完成度のアニメ映画】

マッドハウス、そして吉田玲子恐るべし。
巷の評判が高いので、思い切って観てきた。

旅館という設定と序盤の神楽で「あ、これ『花咲くいろは』+『君の名は』の小学生版っぽいな」という早とちりをしてしまった。

とりあえず映像表現がすごい。奇をてらった感じではなく、往年のジブリのような王道で「日本のアニメすげぇなやっぱり」と再認識してしまう。

特に今回の事故描写は本当に恐ろしかった。
よくYoutubeでドライブレコーダーの事故動画を好きで観るクチだが、アニメだとしてもこのリアリティはなんだ?ビクッって身体が反応してしまうくらい。

序盤わずか5分で襲いかかる主人公への仕打ちに「あれ、これこんなヤバい辛い話だっけ?」と。
しかも旅館で働く話だから、『花咲くいろは』のように「仕事は厳しい+人間関係はドロドロ?」と身構えてしまった笑
だけど流石は文科省推薦の指定作品。出てくる人が優しい人ばかりで良かった。

映画自体、<周りの人との交流を通して成長を見せる主人公>といったポジティブなヴァイブスが満たされていた感じ。劇場内の子どもたちもゲラゲラ笑って観ていたし。

だけど自分は、心に時限爆弾を抱えた女の子を見守る親戚のようにハラハラしながら映画にのめり込んでた。
両親を亡くすという目に遭った主人公なのに、辛そうな表情や弱音を吐かずにハツラツと旅館の仕事を手伝っているあたり、主人公は無理してる感がビンビンで。しかも時々カットバックで、両親との思い出や空想の会話のシーンが出てくるんだけど、「あ、これそのうち《崩壊》が来るよ・・・」としか思えない汗。
あの、途中の高速道路で過呼吸を起こすシーンとか・・・もうね・・・・。

後半から座席のあちらこちらからグズグズと涙と鼻水をすする音が聞こえてきて笑

終盤、案の定《崩壊》し、そこから立ち直りながら「私は、春の屋の若おかみです!」と主人公が宣言して、決意を表明するシーン。これには思わず胸が熱くなった。

最後、主人公の成長とともに、彼女を支えてきた幽霊たちともお別れが来る(理由の説明は特になかったけど大人へのイニシエーションの比喩かな?)。
だけど普通の作品で観るようなヘビーで感情的な描写をするのではなく、「また会えるじゃん、楽しみだね」というものすごく前向き+爽やかなお別れになっていたことに、『花咲くいろは』や『あの花』のマリー演出に慣れきってしまった自分にはものすごく新鮮に映った。

個人的引っかかったものとしては、大女将の祖母が本当に孫に旅館を継いでほしかったのか(最初は結構煮え切らない表情を見せてる)問題と、事故を起こした当人が被害者を認識するシーンと、占い師の帰還のタイミングが良すぎやしないか?が少しだけ。あと、幽霊の一人だけキャラデが一昔前のKey作品っぽいのは笑った。
でもそれらが気にならないほどのハイレベルでこの映画、完成度が高いっす。

旅館モノの名作『花咲くいろは』をもう一度通して観たくなる。
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