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若おかみは小学生!のsomaddesignのレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
5.0
バナナマン設楽さん芸達者すぎ。
エンドロールで名前見つけてビックリした。

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小学6年生の女の子おっこは交通事故で両親を亡くし、祖母の経営する旅館「春の屋」に引き取られる。旅館には少年ユーレイのウリ坊が住み着いていたが、その姿はおっこにしか見えない。そんなウリ坊とのやりとりが誤解され、春の屋の若おかみの修行を始めることになってしまう。最初こそ失敗の連続に落ち込むおっこだったが、不思議な仲間たちに支えられながら、次々とやって来る個性的なお客様をもてなそうと奮闘するうちに、少しずつ成長していく。

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大人気児童文学シリーズだそうだけど、不勉強にも原作未読。
漫画もTVアニメシリーズも全く知りませんでした。
SNSの大評判だけを頼りに完全に前知識ゼロで鑑賞。
(主人公が小学生で若女将になるんだろうって予測だけ)

たまたま自分が見た回は観客の8割が大人、ほぼオッサ…大きな男性のお友達ばかり。
モギリの列で前を歩く女の子が「子供向けの映画じゃないの?なんで大人ばかりなの?」と素朴な疑問を同伴のお父さんにぶつけてたのが印象的。なんかゴメン。


長年ジブリの作画監督を務めてきた高坂希太郎監督。
2014年にジブリ制作部門が解体してから、どんなアニメに関わってらっしゃるのか気になってたけど、まさか劇場用長編アニメを作っていたとは。監督作は「茄子」以来15年ぶりだけど、劇場用長編は初だったような。脚本は「聲の形」「夜明け告げるルーのうた」「リズと青い鳥」などヒット作を数多く担当する吉田玲子。実績実力に疑いのないコンビだけど、それ以上に二人の物語の整理整頓力が凄かった!

児童向けとはいえ、全20巻に渡る長大な物語を90分にキュキュッと詰め込みながらも、物語の肝はキチンとブラッシュアップして補強してる印象。駆け足で物語を進めることもなく、行くべきゴールに辿り着くための必要な要素を丹念に描いていったよう。

どことなく「千と千尋みたいだな」と思ったのは、どちらも仕事を得ることで居場所を確保する少女の話だからかしら。大事な仲間や優しい大人に守られながらも、自立した個人として立ち上がる為に自分の役目を自覚する。そうやって現世に居場所を確保して行く、少女の成長が眩しい。

オッサンからすれば、そうした子供の成長を見られないご両親の無念さだったり、幼くして成長せざるを得なかったおっこの不憫さにまず涙。「もう少し子供でいさせてあげたかった」って気持ち。それでも両親の死を受け入れ、支えとなる存在を失い立派に自立して行く凛々しい姿にまた涙。悲喜交々ゴチャ混ぜで顔をグチャグチャにしたオッサンらで埋まる劇場は、今年イチのホラー味でした。

ある意味「千と千尋」よりずっと残酷でビターな物語で、倒すべき敵や悪人がいない分おっこ自身の物語として胸に迫るつくり。

見事な背景や鯉のぼりアクションの見事さ、食い物がイチイチ美味しそうetc…ディティールに神を宿した作り込みの執念が滲み出てるのも良かった。


欲をいえば峰子ちゃんに「女将修行とか高校卒業してからでいいから、子供は子供らしくしてていいのよ」くらい言って欲しかったのと、峰子ちゃん自身の娘を亡くした悲しさが見えるとより良かった。
あと子供を旅館で働かせるのって、労働基準法とか児童福祉法とか大丈夫なのかしら…とかしょうもない事が気になっちゃった。



ジブリは宮崎駿の後継者を育てられなくて解体を余儀なくされた……って認識だったけど、解体後の方が萌芽が芽吹いて見えるのは不思議というか、なんというか。

84本目
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