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ファミリー☆ウォーズのsのレビュー・感想・評価

ファミリー☆ウォーズ(2018年製作の映画)
4.0
開幕0.1秒でクソ映画を確信する「いらすとや」の説明から始まり、手ブレ補正のないカメラのガタガタ映像、セリフの聞き取れない音響バランス、ド素人の演技、生活感のない空っぽのリビングとクソの上塗りは続くが、視聴をやめてしまうのはちょっと待ってほしい。この映画を最後まで観たとき、あなたの映画観は少しだけ変わっているかもしれない。

たしかにこの映画はクソだ。低予算映画のご多分にもれず映像・音響・セットすべてがクソで塗り固めてある。だが、そんなものがなんだというのだろう? 映像が綺麗なら、音響が良いのなら、セットが作り込まれているのなら映画は面白いのだろうか? 映画の面白さは予算の規模で決まるのだろうか?

ゲームが4Kの時代になってもテトリスが変わらず面白いように、この映画には映画の面白さの核心を突く何かがある。低予算には低予算のヤケクソな爽快感があり、素人芝居には素の反応の生々しさがあり、そこらのアダルトビデオより下手クソなカメラワークには笑いを生み出す愛嬌が、聞き取れないセリフには集中して映画を観ることを放棄させ頭を空っぽにして楽しませる催眠効果がある。そして、それらクソ要素を補って余りある、実はよく練られたシナリオがこの映画にはある。

この映画が証明したのは、情熱と遊び心の力強さだ。手元にクソしかなかろうと、積み上げれば東京タワーよりも高くそびえるだってできる。売れない? 誰も見ない? ならば好都合、クソの雪合戦を始めようじゃないか、ついでにカメラまわして映画一本撮っちゃおうじゃないか。かつて映画館に悲鳴とポップコーンの飛び交う時代があったのだという。観客はスクリーンの悪役へポップコーンを投げたのだ。この映画は、スクリーンから観客へ向けてクソが飛んでくる。であれば我々もクソにまみれる覚悟で、罵声と興奮でもって応えなくてはならない。映画とは本来、受け身ではいられないものなのだから。

幕が下りたとき、私は救われた気分になった。世の中にはこういう映画があってもいいのだ。

『おじいちゃんに一家で餅を食べさせて殺そうとする映画』
この一行の面白さを信じて、どうか最後まで観てほしい。その上でつまらなければ、ごめんなさい。
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